想定の5倍以上! なぜデロンギのサブスクは「受付→停止」を繰り返すのか水曜インタビュー劇場(コーヒー公演)(3/6 ページ)

» 2021年04月14日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

試験的なサブスクは「失敗」

木村: ターゲットを2つの層に絞り込みました。1つは、既存のお客さま。DMを送って、サービスに加入していただきました。デロンギの商品を使っている人たちなので、コーヒー愛好家が多い。一方で、ライト層を獲得するのはどうかと考え、某ショッピングセンターで利用者を集めました。

土肥: ショッピングセンターよりも、家電量販店で展開するほうが相性はよくないですか? すでに全自動マシーンを販売しているので、その横で営業すればいい。全自動マシーンを購入したいけれど、「高いからなあ。ちょっと手が出ないや」とあきらめている人たちには、めちゃめちゃササりそうです。

木村: 当初、その点を心配しました。「一括で購入するか、サブスクで契約するか」となれば、いわゆるゼロサムゲームになってしまうのではないか。カニバリを避けるために、ライト層にアプローチしてみてはどうかと考えました。というわけで、ショッピングセンターで展開することに。

 結論を先に申し上げると、試験的に始めたサブスクはうまくいきませんでした。なぜか。サービス内容はいまのものと違っていて、ポイント制を導入していたんですよね。契約をした人にポイントを付与して、お客さまはそのポイントに応じて、好きなモノを好きなタイミングで交換できるという仕組み。決められたモノが送られるのではなくて、自分が好きなモノを選ぶという形だと、自由度が増しますよね。競合他社が同じようなサービスを始めても、先行優位性があるのではないかと考えていました。

土肥: ふむふむ。

木村: では、なぜうまくいかなかったのか。ある人の利用率は100%に対し、ある人の利用率は0%といった現象が起きたんですよね。強制的に送られるのではなくて、自由度を高めたほうが顧客満足度は上がると思っていたのですが、利用しない人からは「使い方がよく分からない」「注文するのが面倒」といった声がありました。となると、満足する人と満足しない人が出てくることになるので、ポイント制はリスクが高いと判断しました。

 このままサブスクサービスを続けるべきなのか、撤退すべきなのか。半年ほど、暗礁に乗り上げていました。消費者は自由度を求めているのではなく、契約を続ければ高額な全自動マシーンが手に入ることに魅力を感じているのではないか。そのためには、コーヒー豆を定期的に送る形にしたほうがいいのではないか。という結論に至って、いまのスキームにしました。

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