シニア社員の報酬制度も“現役世代”に準ずる。S−M1とS-M2、S−E2、S−E3は専門性の高さを考慮し、個別契約型の年俸制を採用、S−C1〜S−C3とS−E1、S−A1〜S−A3は定期昇給なしの月給制を採る。ただし、どちらも賞与(業績年俸)は原則として支給しない。
70歳まで正社員として働いてもらう、昇給もある、となると、やはりある程度、会社の人件費負担との兼ね合いが必要だ。賞与を除けば釣り合うということだろう。ちなみに退職金は60歳になった年の年度末日に支給し、それ以降は新たな積み増しは行わないルールだ。これも人件費総額を極端に増やさない1つの策であろう。
その退職金の算定方法も変更した。ポイントの積み上げによる「退職給与」と「確定給付企業年金」の2本立ての形は従来と変わらないものの、ポイント表の簡素化を図り、等級がよりダイレクトに反映される仕組みとなった。
福利厚生においては、慶弔規定、休職・休業ほかの制度の適用は、シニア社員になっても何ら変わるところはない。“現役世代”と同一である。
同社の70歳定年制は長年の経験や知識、スキルをもつ技術コンサルタントをより生かす場を提供し、採用の面でも利点があるだろう。ただし、企業にとっては人件費との平衡を保つ必要があり、また社員にとっては60歳以降のワーク・ライフ・バランスをもう一度見つめ直す必要が出てくる。
シニアも若手も、もちろん中堅も全社員が刷新された人事制度の下で活躍し続けられる体制を整えたNJS。社長の思いの強い改革であり、人事制度の刷新案を作るときは、専門のプロジェクトチームを結成し、社長も交えて毎週1回議論を重ねるという熱の入れようであった。新制度導入の際にも社長からメッセージを発し、また全国の拠点に社長ほか役員が赴き説明を尽くした。
こうした経営層の思いやメッセージは新制度の円滑な運用に欠かせない。加えて「現場の声をどれだけ聞けるか」が大事です、と小林氏。新評価制度の導入時、時間をかけても会社になじむ形の評価に変更したのも現場の声を聞くことを大事にした表れだ。
小林氏は「制度改革においてはトップダウンで進めるべきことと、ボトムアップで進めたほうがよい場合があることがよく分かりました」という。新しい制度そのものの出来栄えも重要だが、現場に受け入れられて初めて効力を発揮するのである。
(取材・文 大下明文)
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