本記事は『人事実務』(2021年3月号)特集「70歳雇用に向けて」より「事例1 NJS」を一部抜粋、要約して掲載したものです。当該号の詳細はこちらからご覧いただけます。
NJSは2019年4月から「70歳定年制」を導入している。その背景や導入経緯、実際の制度を管理本部人事総務部長の小林崇氏にうかがいながら、シニア社員を活用する際に人事担当者が心得ておくべき点やスムーズな導入につながるコツを探っていこう。
同社は上下水道施設などのインフラ設備設計を手掛けるコンサルティング会社である。50年以上の歴史を有し、特に下水道関連に関しては国内屈指の実績を上げている。
●社名:株式会社NJS(旧社名:日本上下水道設計株式会社)
●創立:1951年9月
●資本金:5億2000万円
●事業内容:上下水道等のインフラに関するコンサルティング、調査・設計・施工管理・経営コンサルティング、環境計画・環境アセスメント・防災減災対策 等/上下水道等の事業運営に関するサポート業務、住民サービス・財務会計処理・総合施設管理、企業会計移行・官民連携サービス・経営改善支援 等/海外コンサルティング事業
●従業員数:487人(単独、2019年12月末現在)
人材採用・育成で重視しているのが技術の知識やスキルである。「技術士という科学技術分野で高難度の資格がありますが、当社社員の半分はこの資格を取得しています。この資格をもっていないと1つのプロジェクトをまとめ上げるのが難しいのです」
また、国内事業ばかりでなく、海外事業の売上比率が全体の3分の1と、海外進出も目覚ましい。「海外の設計コンサルタントは80歳まで現役でいけます。数理計算、構造計算に秀でているだけでなく、外国の社会・経済・宗教などの事情や法制度に通じている人は貴重な存在です」
そのような業界で60歳定年を設けていると、それ以降も働く意欲のある資格者は定年を機に別の会社に移りたいと考える可能性もある。60歳定年制は自ら宝を捨ててしまう行為であり、競合他社を利することにもなりかねない。
そこで「働き方改革による70歳定年の実現」「創造性と生産性の向上」「人材育成の基盤強化」を3つの柱とする人事制度の刷新を行った。そのなかでも経営トップが特に重視した柱が70歳定年だった。
それでは60歳以降はどのような業務を、いかなるポジションで実施することになるのか。また評価や給与はどうなるのか。それらについて述べていきたい。その際、人事制度改革は全社員のキャリアパス、昇格ルール、評価制度、報酬制度などを大きく変えるものであるので、60歳までの社員、いわゆる“現役世代”との関連性において説明していこう。
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