片山さんは、新型コロナの感染が広がった第1波と第2波が終息した後の“客の戻り”に注目したそうだ。
「競合カフェチェーンを見ると、客数は8〜9割ほど戻っていましたが、プロントは6割ほど。夜のバーについては2割ほど。このままではお客さまに選んでもらえなくなってしまう――。こうした危機感を覚え、新しいプロントを立ち上げることにしました」
プロントが創業したのは、1988年のこと。東京ドームが完成したり、青函トンネルが開通したり、カラオケボックスが話題になったり。そんな時代に「カフェ&バー」という業態でスタートした。当時、昼はコーヒーを飲んで、夜はビールを楽しむといったスタイルの店は珍しく、人気を集めた。いわゆる“二毛作”のような形で、33年間営業を続けてきたわけだが、今年その歴史にピリオドを打ったのだ。
とここまで書いて、「ん? 新しい店も昼はカフェ、夜は酒場なので、引き続き“二毛作”なのでは?」と思われたかもしれない。店側に聞いたところ、それは「違う」らしい。では、なにが違うのか。ターゲットである。昼は「働く20〜30代のミレニアル世代」で、仕事の前や合間に立ち寄れる空間を提供するとのこと。夜のターゲットは「全ての働く人」で、仕事終わりに仲間と気軽に集えて、会話が弾む酒場をつくっていきたいとのこと。同じ店だが、2つの顔を持つという意味で、キーワードを「二面性」としている。
事実、夜の写真を見せてもらったところ、照明の色が変わる。バーのように暗くしているのではなく、ところどころに赤紫色の照明をあてているので「自分が知っているプロントではない」と感じる人が多いのではないだろうか。
昼と夜とでは、雰囲気がまるで違う――。こうした店はどこかになかったかなあと悶々としていたら、片山さんがポツリ。「映画『千と千尋の神隠し』に出てくる油屋(あぶらや:主人公が働く湯屋)ではないでしょうか。映画のような世界観を、この店で少しでも表現できればと思っています」
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