チェーン店で考えたとき、店長の権限でできることの中には何があるだろうか。売り上げに直結する、立地や席数や単価は本部が決めることだ。自分で変えられる現状としては、スタッフ教育を徹底し、マルチタスクにこなせるシフトワーカーを育て人件費を削る、広告求人費を抑えるあたりがリアルなところだろう。
しかし、DX化により業務の効率化を図ることで、勤続年数に応じて習熟度が増した店長が2店舗、3店舗とマネジメントできるなら、生産性や賃金の大きな向上に期待できる。
KMWの看板サービスであるはたLuckでは、店長はシフト管理(パソコン版でも操作可能)のほか「連絡ノート」という機能にシフトワーカーと共有したい新商品情報などを投稿したり、トークルームでコミュニケーションをとったりできる。
一方、シフトワーカーはいつでも連絡ノートで情報を得られるため作業の習得がスムーズになるほか、「星を贈る」を使って仲間同士で感謝を伝え合うこともできる。「欠員募集」機能で、店長は欠員をスムーズに補充、シフトワーカーは空き時間を有効活用できる点も魅力と言える。
今まで紙や口頭、メールでやりとりしていた重要事項をアプリ上で行い、連絡漏れや業務の効率化を図ることが目的だ。
はたLuckの大きな特徴は、店長や本部だけではなくシフトワーカー全員にIDを発番し、アプリ操作を可能とするところにある。一昔前の“バカッター”騒ぎがいまだ尾を引いており、このシステムに難色を示す店舗もあるというが、DX化にシフトワーカーを巻き込むことに、はたLuckの原点はある。
「一流大学を出て、終身雇用の大手企業に入れば一生安泰。そんな時代は終わりました。自分より早く会社が死ぬこともある中で、じゃあお金以外で働く幸せって何だろうと考えたんです」(染谷氏)。たどり着いた答えは、“勤め先のビジョンと自分のやりたいことが一致していること”だったという。
店舗で働く人全員にアプリを使ってもらうのは、「あなたが必要なんだ」と伝えて、「私の店だ」と思ってもらえるような店づくりをするため。軍隊式に命令がきて、マシンのように物言わず働くことは、幸せとは言い難い。この商品の何が素晴らしいのか、どう美味しいのか、プレゼンすることでお店のファンを作っていくこと。「仕事は苦役ではない。働くことで幸せは得られる」――“WorkをLuckに”という意味のアプリ名は、そんな想いに由来している。
生産性が低いという問題に加えて、コロナ禍の影響が直撃しているサービス産業。客足が遠のく今、店舗は予算を省いて利益を出す必要性に迫られている。積極的にDX化を促進することで、業務効率化はもちろん働き手のエンゲージメント向上を図り、店舗での体験価値を高めることはウィズコロナを乗り切り、アフターコロナを生き抜くことにもつながるはずだ。
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