食品宅配大手のオイシックス・ラ・大地が、コロナ禍の長期化に素早く対応して会員数を大きく伸ばしている。消費者の巣ごもりニーズが高まる中で、2021年3月期は大幅な増収増益を見込む。
公表している業績と業績予想を見ると、第3四半期累計業績(20年4月〜12月)は、売上高が前年同期比43%増加の747.9億円、営業利益は同3.8倍の61.3億円。3月期末の通期予想は、年間売上高が975億円で同37%増、営業利益は2.64倍に急拡大するとみている。
この業績を支えているのが、会員数の順調な伸びだ。オイシックス・ラ・大地は、「Oisix」「大地を守る会」「らでいっしゅぼーや」の3つの食品宅配サービスを展開していて、3月期末には合計で前期末より7万2000人増の40万6000人まで増えると見込んでいる。同社の松本浩平・取締役経営企画本部長に、好調を維持できた販売戦略の狙いをインタビューした。
――オイシックス・ラ・大地は3つのブランドを持っていますが、それぞれの違いは何ですか。
「Oisix」は30〜40代の小さな子どもがいる家庭、「大地を守る会」は50代以上の子どもが巣立った夫婦、「らでいっしゅぼーや」は40〜50代の料理への意欲が高い家庭とターゲットを分けていて、それぞれの提供価値が違います。地域的には全国展開をしていますが、「Oisix」は首都圏と都市部が中心です。
――ここまで売り上げを大きく伸ばせた理由をどう分析していますか。
当社が、巣ごもり需要に対して的確に応えることができたからだと考えています。一方で、リモートワークが浸透することによって自宅で過ごす時間が増え、夜の会食も自粛されていたという環境的な要因も大きいですね。
また、昨年の緊急事態宣言のときに、変化に対応できたことも功を奏したと考えています。例えばOisixでは、学校が休校になった際、給食用の牛乳の出荷ができなくなった酪農家を支援するために、牛乳を販売し、レシピを特設サイトに掲載するなど「牛乳支援コーナー」を作りました。また、飲食店が営業できなくなったときには、レストランの商品を家庭に届ける「おうちレストラン」を始めました。世の中とお客さまの変化にスピーディに対応できたのが良かったと思っています。
もちろんコロナ禍によって増えている分はあるものの、例えばKit Oisixというミールキット商品では展開するメニューを進化させ、他社とのコラボを増やす施策を取ることで全体の会員数増加をけん引できました。会員の目標数字は設定していませんが、まだまだ伸ばせると考えています。
――変化にスピーディに対応するために貴社としては高島宏平社長(正式表記は「はしごだか」)以下、どのように日々の問題を解決したのでしょうか。
昨年の宣言下では、意思決定のスピードを通常よりも上げました。高島など40人ほどが参加するマネジャークラス以上の打ち合わせを毎日オンラインで実施し、各部門から上げられる課題のほか、お客さまの動向なども共有し、日々の対応を決定していきました。
現場の対応については、イレギュラー時は経営陣の意思決定フローと同様に、部署の垣根を越えて議論できる環境を作りました。関係者がオンラインで一堂に会して打ち合わせをし、その場で各部署がいつまでに何をやるべきかを決定し、実行するようにしています。例えば牛乳支援は企画を実施しようと決定してからサイトオープンまで3日間で実現しました。
――2013年に始めた食材とレシピをセットにしたミールキット「Kit Oisix(キットオイシックス)」のコース会員数が20年12月末現在19万8630人と、前年比で41%増加、3年前との比較では3倍になっています。その理由は何だとみていますか。
ミールキットはレシピを考える必要がなく、主菜と副菜を20分で作ることができるので、忙しい共働き家庭を中心に重宝されている商品です。また、単に時短になるというだけではなく、野菜をたっぷり食べられたり、見栄えの良い料理を作れたりする点がKit Oisixの魅力です。
数年前まではミールキットという言葉も知られていなくて、「ミールキットって何ですか」と聞かれることがありました。最近ではほかの小売り業態でも展開されていて、ミールキットの市場ができてきています。消費者に認知されてきました。
価格は2人前が980円〜で、1週間で20〜30メニューを展開し毎週ラインアップを変更することで飽きがこないように工夫しています。共働き世帯が増え、コロナ禍で「おうちご飯」ニーズが高まったことに対応した結果、21年2月に「Kit Oisix」の累計出荷数が7500万食を超えました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング