キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行なう。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。
新型コロナウイルスの変異株の拡大で次の大きな波が懸念される中、東京五輪を開催するかしないか――? 我が都道府県に緊急事態宣言を出すか出さないか――? これらを「決める」ことは、一般人の想像を超える重く苦しい仕事です。しかし最終的に、リーダーは独りそれを行わねばなりません。きょうはその「決める」ことが何であるかをあらためてながめてみたいと思います。
「決」の字は、「さんずいへん」に「えぐる」という組み合わせです。これは大雨で川の水が増し、大規模な洪水が起きそうな切迫した状況の中で、堤防の一部を切って水を流し、被害を最小に留めるかどうかを判断することを示しています。
堤防の一部を切れば、切った地域の被害は確実に出る。より大きな被害を食い止めるにはやむをえないかもしれない。しかし、このまま増水がおさまって堤防を切らなくてすむ可能性もある……。「決める」とは、そういった緊張が膨れあがったところで意を固めることです。
人が何かを「決める」とき、そこには3つのステップがあるように思われます。まずは「分析」。情報を集め、状況を明らかにします。次に「想像」。取り得る選択肢を考え、それぞれについて利点や欠点、それが及ぼす結果を思い描きます。そして最後に「覚悟」。
この3ステップにおいて、2番めのいわばシミュレーション的想像力が重要な鍵です。1番めの情報をうまく生かすのも、3番目の覚悟の深さ・強さを生み出すのも、想像力です。「これを選んだらどういう影響が出るだろう。このやり方だと受けた人の気持ちはどうだろう」など、どれだけ冷静で、しかし血の通った、そして哲学のある想像ができるか。その質が、決断の質を決めるでしょう。
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