A 議事録作成の際、質問者が誰か特定できないと困りますので、必ず質疑応答の前に氏名と株主番号を確認する必要があります。
株主総会における質疑応答で怖いのは、そもそも質問を取り上げ損なうことです。
株主の質問が長くなり、質問なのか、意見なのか、動議なのか、それらが混ざり合っているのか分かりにくいことがあります。議長は、株主に質問を簡潔にしてもらうよう求めるとともに、長くなった場合にはいったん回答を挟むなどの対応が必要です。
決議の方式としては議案を1つずつ審議(質疑応答および決議)する個別上程方式と、全ての議案の説明後にまとめて審議する一括上程方式があります。
個別上程方式の場合、議案ごとに質疑応答を行いますが、株主からはどのタイミンで質問をしてよいのか分からず、すでに審議の終わった事項について質問することが往々にしてあります。
議案の審議ごとに、審議の対象が限定されていることをアナウンスし、できる限り対外の質問が出ないよう注意が必要です(図表5)。また、実際に質問が出た場合、明らかに対象外というケース以外は、事務局や弁護士と相談することを躊躇(ちゅうちょ)しないことも重要です。
株主総会における株主の発言には、取締役等による回答を前提としない株主の見解の表明である「意見」、取締役等による説明義務の履行を要求する「質問」、株主による議案提案権の行使である「動議」があります。
動議というと、どうしても「ギョッ」としてしまいます。しかし重要なのは、多くの会社では議決権行使書面により結論が決まっており、会社提案の議案が可決される結果、動議も否決される(原案先議)ことです。
動議があっても、焦らず淡々とあらかじめ作成したシナリオに沿って議事を進めましょう。
会社法では、株主総会において回答拒否できる場合を列挙しています(図表6)。
事務局では列挙事由に該当するかチェックする体制を整えるとともに、実際に回答拒否をする際には必ず弁護士と協議しましょう。
株主総会における株主の発言が多数あり、いわば「荒れた総会」の場合はもちろん、そうでない場合でも、ついつい議事進行が駆け足になり、議長によっては、早めに質問を終わらせようとしがちです。また、質問の強引な打切りや退場命令は、リスクのある行為であり、最悪の場合は決議の取消しにつながりかねません。
危険なのは、質問と回答という手順が曖昧になっていき、ついつい「議論」になったあげく、カッとなって強い発言をしてしまうような場合です。このような事態を避けるため、弁護士と事務局はできる限り回答者の近くに控えておくとともに、質問の打切りや議場の秩序維持権の行使に際しては、必ず弁護士に相談をしたうえで行う必要があります。
弁護士法人ACLOGOS代表。慶應義塾大学法学部卒。依頼者との対話を重視し、ささいなことも見逃さない親身な相談姿勢で法務サービスを提供。
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