保険業界のDXの課題とは? SaaS型基幹システム「Inspire Express」、エポス少短に採用

» 2021年05月13日 18時20分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 Finatextホールディングス子会社のFinatextは5月13日、デジタル保険をスピーディに立ち上げ可能にするパッケージソリューション「Inspire Express」の提供を開始した。第1弾として、丸井グループのエポス少額短期保険が採用。エポス少短は「生活サポート保険」の提供を開始した。

 Inspire Expressの特徴は、保険業務に必要な機能をワンストップで提供することだ。さらにSaaSモデルであるため、個別にシステムを開発するのに比べ初期費用は100分の1、期間も数週間で保険の提供を開始できる。

 さまざまな業界でDXの波が押し寄せているが、保険業界のDX化は遅れている。Finatextで保険事業の責任者を務める河端一寛氏は、「巨大で複雑なレガシー基幹システムが足かせになって、進めない」と保険業界の課題を挙げる。保険に新しい特約を1つ追加しようとしただけでも開発に2〜3年、数億円のコストがかかってしまう状況だ。このコストに見合うリターンが得られるのかという判断になるため、変革に向けた動きが制約される。

保険会社に「長崎の出島のように使ってもらう」

 対して、「長崎の出島のように使ってもらう」(河端氏)ことを目指すのが、軽い保険基幹システムである「Inspire」だ。保険商品、保険申込、契約照会・異動、保険金請求などの機能を持った基幹システムに、ユーザー管理、契約管理などを行える管理コンソールがセットとなっている。

保険業務に必要な機能をワンストップで提供するInspire Express

 このInspireを使い、さらに商品開発から提供までのスピードを上げるために用意したのが「Inspire Express」(Express)だ。Expressでは、保険契約を行う顧客が触れる「顧客フロント」もひな形を用意してパッケージ化した。保険のWebサイトトップページでありランディングページであり、申し込みフローの部分だ。

 「顧客フロントは訴求内容を変えたり、サイトの作りを変えるため、これまで汎用化が難しかった。そこを標準化することで早期に立ち上げられるようにした。従来9カ月くらいかかっていたが、2カ月でリリースできるようにした」(河端氏)

Inspire Expressを採用したエポス少額短期保険の「生活サポート保険」

 導入に向けたメインのターゲットは保険会社だ。生保、損保の区別はしておらず、あいおいニッセイ同和損害保険にもInspireの採用実績がある。対面の安心感が強い死亡保険など、保険ごとに、デジタル保険との相性の良し悪しはあるが、保険の種別を問わず導入を見込む。

 今回のエポス少短のように、顧客基盤をすでに持っている企業が顧客に保険商品を提供する際に、スピーディに商品開発を進めるために採用されるシーンも増えている。InspireのAPIを使い、エンベデッドファイナンスの形で、既存のサービスに保健機能を組み込む形にも対応する。「純粋な保険から飛び出して、家電量販店の延長保証のようなものにも使ってもらえるのではないか」(河端氏)

 銀行や証券など、さまざまな金融サービスが機能として他のサービスに組み入れられるエンベデッドファイナンスの動きが盛んになってきている。中でも、ECサイトと商品に対する損害保険、宿泊や演劇に対するキャンセル保険といった形で、組み込みが期待されているのが保険分野だ。

 Finatextでは、年度内に5件程度の新規導入を目指すとしている。

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