外国人労働者や非正規雇用者の増加に伴い、新たな給与支払いの方法が注目されています。ここでは、「デジタル払い」「前払い」について、労務・税務上の注意点を確認します。
給与のデジタル払いとは、事業主が銀行口座を介さず、「○○ペイ」と呼ばれる電子マネーで給与を振り込む方法です。2018年から政府内で検討が行われ、2020年度内の制度化を目指していました。
銀行振込とデジタル払いはキャッシュレスという点では同じですが、プロセスが異なります。
銀行振込は、企業が銀行に給与の振込依頼を行った後、従業員がATMから引き出す方法です。一方、デジタル払いは、「ペイロールカード」という給与支払専用のプリペイドカードを使い、銀行口座を介さず直接従業員の電子マネー口座に支払います。
日常の買い物で急増している電子マネーですが、一昨年から個人事業主への報酬支払いや経費精算でも活用されるようになりました。この流れを受けて、給与のデジタル払いを推し進めようとしているわけです。
デジタル払いが実現すれば「銀行口座を開設できない外国人労働者が給与を受け取りやすくなる」「日常生活での決済や送金がよりスムーズになる」とみられています。給与の支払いコストが下がるのもメリットの1つです。
給与の前払いとは、従業員の給与を給与支払日より前に支払うことです。資金移動業登録をした前払いサービス会社が銀行やクレジットカード会社と提携し、給与分のお金を預けたり振込依頼をしたりして前払いを行います。
飲食業や介護事業などでは、非正規雇用が従業員の大半を占めるケースが珍しくありません。頻繁に資金を必要とする従業員がいるなどで、福利厚生の一環として前払いを導入する事業主が増えています。結果、従業員の採用や定着につながることもあるようです。
前払いできる金額は、労働基準法で厳しく制限されています。また、安易な前払いは、労務・税務の問題が生じるほか、違法行為に該当するおそれがあります。
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