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リストラしたい会社と、しがみつきたい社員 双方を苦しめる「成功体験」の正体パナソニック報道で話題(5/5 ページ)

» 2021年05月27日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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会社と社員の目線を整理してみると……

 人員削減策が奏功した時代に描かれていた未来像と、現在から見た未来像は同じではありません。人口が増え続けていた時代とは異なり、現在は減少期に入っています。コロナ禍によって見えづらくなっているものの、未来に向けて恒常的な人手不足に陥る可能性があります。未来像を描く上では決して無視できない条件の一つです。一方で平均寿命は延び続けており、長期的な人生設計が必要にもなっています。

 これまでとは異なる未来が待ち受けている状況の中で、会社側も社員側も、過去の成功体験を踏襲することが最善策なのかどうか検証し直す必要があるはずです。

 「人員削減策を実施する『会社側』の目線」と「人員削減対象となっても会社に残留する『社員側』の目線」それぞれについて、これからの未来像を踏まえた懸念点を3つの側面に倣って整理したのが以下の図です。

会社側の目線
社員側の目線

 このように、会社側も社員側も、過去の成功体験に固持していては不幸な結末となる可能性があるのです。時代は変化し続けています。副業が促進されるようになり、人材が有するスキルは一社で独占する時代からシェアする時代へと移り変わりつつあります。一方、平均寿命は延び、収入獲得や生きがいを得る手段として、仕事に携わる時間は人生の中でさらに長くなる可能性があります。

 私たちを取り巻く環境が前へ進んだとしても、過去の成功体験が通用するケースはあるのかもしれません。しかし、今後は通用しないケースが増えていくことになるのではないでしょうか。会社も社員もそれぞれの最適解を見つけるために未来像を描き直し、成功体験を刷新しなければならない時期に来ているように思います。

著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)

ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”の声のべ3万5000人以上を調査したレポートは200本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


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