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リストラしたい会社と、しがみつきたい社員 双方を苦しめる「成功体験」の正体パナソニック報道で話題(2/5 ページ)

» 2021年05月27日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

(1)経済面のジレンマ

 早期退職などの制度に応募すれば割増退職金はもらえるとしても、会社に残って給与を受け取り続けた方が、トータルでもっと多くの金銭が受け取れる可能性があります。

 一方、もし割増退職金を受け取った上で転職し、前職以上の給与を受け取ることができた場合はどうでしょうか。もちろん、金銭的にプラスとなります。しかし、転職したことで逆に給与が下がってしまったり、次の仕事が見つからず長期失業したりというリスクもあります。自分や家族の生活を考えると、簡単には決断できません。

(2)ミスマッチのジレンマ

 早期退職などの制度に応募せず会社に残ったとしても、きっと活躍の場は用意されていないはずです。会社に残れば安定した給与を受け取り続けることができるかもしれませんが、能力を生かせず、望まないポジションに就き、やりがいも感じられず、自分が有している経験やスキル、希望条件とはミスマッチの状態で仕事することになるかもしれません。

 一方、思い切って退職したところで、社外に活躍の場が用意されているとも限りません。さらにつらいミスマッチ状態に追い込まれてしまう可能性もあります。

画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ

(3)職場環境のジレンマ

 早期退職などの制度には応募せず、会社から不要な人材と見なされていることを日々感じながら職場に残り続けることは、精神的にとてもつらいはずです。同僚からの目が気になってしまったり、ことあるごとに会社側からミスを指摘されたり、圧力をかけられたりしないか不安にもなります。

 一方、転職したとしても、新しい職場が肌に合わない可能性もあります。それならば、仕事の進め方を熟知し、人間関係も構築されている慣れた職場環境にいる方がまだ良いかもしれません。

 このように、人員削減策の対象となったことでジレンマに苦しめられて、残っても地獄、出ても地獄という状況を想像してしまうと身動きが取れなくなってしまいます。結果、残留を選択することになる社員がたくさんいます。

 それに対し会社側は、人員削減策を実施しても思うように退職者が増えない可能性を見越して、割増退職金等できる限り魅力的なオプションを設定します。しかしながら、人員削減策を実施することで会社側にも少なからず“痛み”が生じます。こちらも同じく3つの側面から整理してみます。

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