トヨタTHS。それは1台のクルマを開発するためではなく、自動車の未来のために考え出されたものだった。最初からエコカーとして大ヒットさせることを狙ったのではなく、既存のエンジン車とはまったく違う方向性から、将来のクルマを考えた結果、導かれたのがハイブリッドだったのである。
それにしてもこの手の記事を書いていていつも思うのは、書き手でさえTHSをキチンと理解していない人が多過ぎる。電気式CVTと呼ばれる変速機構を含めて、ここで少し仕組みについて触れておきたい。
トヨタTHSは遊星ギアを用いて、エンジンと2つのモーターを連結し、状況に応じてモーターのみの走行からモーターとエンジンを組み合わせた走行、そしてエンジンで走行しながら発電機で充電するなど、柔軟に切り替えることができるものだ。しかも、それを実現しているのは一組の遊星ギアだけなので、損失も極めて少ない。
MG1(モーター・ジェネレーター1=1基めの発電機兼モーター)は遊星ギアの中心にあるサンギアに直結していて、取り囲むプラネタリーギアを保持するプラネタリーキャリアとエンジンの出力軸が直結している。遊星ギアの外周になるリングギアには、MG2が直結(現在のTHS IIは減速機を介している)する。MG2は走行用で加速と減速時に直接駆動力を発揮するだけだ。
現行プリウスに採用されているTHS IIの仕組み。エンジンからの出力はプラネタリーキャリアに伝わり、MG1が回すサンギアの回転数によってリングギアの回転数が決まる。MG2の力は減速機を通じてファイナルギアへ伝わり、タイヤを直接回す力になる。初期のTHS、THSIIはMG1とMG2が中空軸によって同軸上にレイアウトされていたが、仕組み自体は現行プリウスと変わらない賢いのはMG1の使い方で、エンジンに積極的に発電させることもできるだけでなく、自らの回転数をコントロールすることで、エンジンの回転数をリングギアへ伝える際の変速機にもなる。さらに高速巡航時には変速機として役立ちながら、発電した電気でMG2を駆動して、燃費を助けるのである。
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