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会社公認「働かない制度」 “ITが好きな”企業が導入したワケ毎月最大20時間(1/4 ページ)

» 2021年06月08日 07時45分 公開
[人事実務]

本記事について

 本記事は『人事実務』(2021年5月号)特集「副業・兼業のいま」より「事例2 フューチャースピリッツ」を一部抜粋、要約して掲載したものです。当該号の詳細はこちらからご覧いただけます。

京都に根付き、サーバホスティング事業を基盤に成長

 フューチャースピリッツは、代表取締役を務める谷孝大氏が大学時代、19歳のときに立ち上げた会社である。お客さまのWebサーバやメールサーバ、データベースサーバをデータセンターで24時間365日管理する「サーバホスティング事業」を中心に、クラウド型のフォーム作成サービスをはじめとする「マーケティングソリューション事業」、Web サイト制作やWeb システム開発などを行う「プロデュース事業」を展開している。国内のみならず、中国、タイ、マレーシア、ベトナムにあるグループ会社を通じて、アジア地域でも事業を行い、時代のニーズに応じて領域を広げてきた。

 現在同社で働くのは、「ITが好き」という思いのある約100人。そのうちエンジニアが3〜4割を占めている。ITの中心地は東京であるのに対し、フューチャースピリッツは京都に本拠地を置く。同社管理本部人事総務部長の川田博隆氏も「ここ京都ではエンジニアの採用は厳しい」と語る。それでも京都でビジネスを続けるのは、「この地に育ててもらった」という感謝の気持ちから、京都で根付いていきたいという創業者の思いがあるという。

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会社公認「働かない制度」導入の背景

 社会情勢に応じて柔軟に働き方を変えやすいのが、100人規模の企業の強みだともいえるが、同社が2016年6月スタートさせた「会社公認 働かない制度」は、特にインパクトがあるネーミングだ。「誤解を受けるかもしれないが、まずはキャッチーな名称にして興味をもってもらおう」というねらいで、この名にしたという。

 制度の正式名称は「社員スキルアップ支援制度」。その名の通り、社員のスキルアップを支援するねらいで作られた。業務時間中に毎月最大20時間を、「スキルアップを目的とした」業務外の勉強や趣味、副業に充てることができる制度である。

photo 「働かない制度」の規定

 同社では、もともと社員には多様な経験やスキルを積んで欲しいという思いから、業務外での副業に関しては、個別に承認をしていた。そうして副業をしている社員から「副業での経験は本業でも役に立つので、会社としてもっと推奨してほしい」との提案があったことが会社公認のこの制度ができたきっかけだ。

 「ずっと社内だけで仕事をしていると目線が固定化されてしまいます。社内で最適化されすぎると、仕事ができる気になってしまいますが、しかし社会的にはどうなのか分かりません。社外とつながることで新しい視点が生まれ、より新鮮な気付きを得られ、自分たちのビジネスへの還元が期待できます」と川田氏は説明する。

 また、社内でもさまざまな研修制度を実施しているが、そこに限界があるのも確かで、社員が自学できる環境を整備しようと考えたことも一因だ。

 このような背景から、業務時間中の副業を解禁。さらに副業だけでなく趣味や社外活動も会社の承認があれば「内容に制限なし」とし、社内の備品の使用もとがめられることはない。対象者は役職問わず全従業員だ。

 ただ副業となると、守秘義務や労災発生時の対応、就業時間の管理など検討すべき項目は少なくない。

 「これらについては、いくらでも議論の余地があります。しかし現段階で細かく制限していたらキリがなく、そこを議論しているのは本質なのかという疑問もあり、まずはやってみようとなりました。そして進めていくうちに、課題が出てきたらつど対応していくことにしたのです」(川田氏)

利用者は年1回レポートを提出

 では、実際に制度を使う際の流れをみていこう。

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