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会社公認「働かない制度」 “ITが好きな”企業が導入したワケ毎月最大20時間(3/4 ページ)

» 2021年06月08日 07時45分 公開
[人事実務]

副業はオンラインショップ運営、フィギュアスケート指導など

 これまで累計で49人がこの制度を申請しており、そのうち約3分の1が「副業」を理由としている。副業の内容は、動画作成、Web サイト制作、自作アクセサリーのオンラインショップ運営、家業の手伝いなどである。

photo アクセサリーの制作・販売を行う社員も

 「副業以外」としては、大学に通う、地域イベントの企画運営、英会話教室への通学など幅広い。

 マーケティング本部で広報担当の宮田有紗氏も利用中の1人だ。宮田氏はじつはフィギュアスケートの選手で、現在は指導者も務める。指導は収入が発生するのでこれは「副業」で申請し、練習は「自由活動」で申請している。

 この制度は入社後、半年が経過してから申請可能なので、宮田氏は入社年の11月から使っている。週2〜3回、就業時間から1時間30分早い17時に退社。練習場が近いので17時30分から練習を開始し、終了は遅いときは22時くらいになるという。

 小5からフィギュアスケートを始めた宮田氏は、より上達したいと思い始めた時期がちょうど就職活動のタイミングに重なった。

 「就職をすれば練習時間を確保するのが難しいので、引退するんだろうなと漠然と考えていました。しかし、就職活動をするなかで当社にこうした制度があることを知り採用試験にのぞみました。この制度の使い方を面接時に説明されて、就職を決めました」(宮田氏)

 実際利用してみて、「毎日にメリハリがついたこと、早期から時間管理ができるようになったこと」が大きなメリットとなったと話す。

 「17時までに仕事を終えるにはどうすべきか、仕事のスピードアップが図れるようになりました。また副業では指導者としてさまざまな人と接します。本職では関わらないような方と接することが多く、対人スキルが磨かれたと感じます」(宮田氏)

自社に関心をもってもらうきっかけに

 制度導入から5年ほどたったいま、利用者からは「本業でも生かせるスキル、経験ができた」「会社、経営のことを客観的に考えることができた」「制度を使ったおかげで本業にも自信がもてた」といった声があがっているようだ。

 さらに、自身が就活時に制度があることで入社を決めた宮田氏は「採用の側面でメリットがある」と指摘する。川田氏も「当社に興味をもってもらえるきっかけとなっている」と同意する。

 「働き方に関心をもっている若者は増えてきていましたが、その傾向はコロナ禍でますます顕著になってきています。いまでこそ副業解禁の流れが出てきていますが、他社に先がけた形で早くから導入しているため、そこをフックに当社に興味をもっていただける機会は増えていると感じます」(川田氏)

 また「ITが好き」ということが根本にあり、そのうえでこの制度を使って何かしらやりたいと興味をもっている人は、ITの仕事に関しても明確な意志があると感じるという。制度を通して、「お互い助け合える文化が育ってくる」という組織風土の醸成も期待できそうだ。

普及浸透の3つのポイント

 同社で大きな問題もなく、活用が進んでいる秘訣はなにか。川田氏は「ポイントは3つある」という。

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