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「シニア=無能」なのか? 多くの企業が導入する早期退職・シニア活用施策に潜む違和感の正体シニア層は外、若手層は内(3/4 ページ)

» 2021年06月09日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 例えば、対象年齢を定めた早期退職制度です。

 仮に早期退職制度の対象者を定年まであと10年となる50歳以上と設定した場合、対象者の中には、賃金以上に能力を発揮している人材もいるはずです。逆に、50歳未満の中にも能力発揮できている人材もいれば、そうでない人材もいます。年齢で一斉に線引きしてしまうということは、個々の実力をフラットに評価するのではなく、有用な人材も含めて十把一絡げにしてしまうということです。

 これでは、年齢で人材の能力を評価するという年功賃金の考え方と根本的には同じです。年齢に関係なくフラットに仕事の実力で判断する仕組みに転換しなければ、年功賃金がもたらしてきた弊害を修正することはもちろん、評価に対する社員の納得感を得ることもできないはずです。

 実力主義が浸透している世界を見れば、年齢を基準に人材を評価することがナンセンスであることが良く分かります。分かりやすい事例の一つが、芸能界です。お笑いコンビ霜降り明星のお2人は並み居る先輩たちを飛び越え、結成6年目の20代半ばでM-1グランプリを制しました。フラットに実力で評価される世界では、年齢は関係なく、実力さえ伴えば評価されて頂点に立つことができます。

 一方で、今もトップランナーとしてお笑い界を引っ張り続けているダウンタウンのお二人は50代後半。もし、所属する吉本興業が一般的な会社と同じように、一定の年齢で線を引いて早期退職制度を実施すれば対象者になりそうな年代です。

 同じく吉本興業の明石家さんまさんに至っては、一般企業であれば定年を迎えて再雇用されている年齢です。しかし、今も誰よりも観客の笑いをとり続けるトップランナーとして活躍しています。一般企業にも、誰よりも受注を獲得して伝説の営業と呼ばれるようなシニア社員がいます。しかし、再雇用制度が年齢で一律に適用される会社の場合、実力が伴っていたとしても一定の年齢に達したという理由だけで、一線からひくことになります。

 年齢がその人の仕事能力を測る物差しとして本当に適切なのか否か、あらためて問い直す必要があるはずです。少なくとも、芸能界やプロスポーツなど、実力主義の世界で年齢は関係ありません。シニアでも実力があれば第一線で活躍し続けられますし、キャリアの浅い若手でも実力があれば頂点を極めることができます。一般企業が早期退職制度などの条件を年齢で区切ることは、年齢差別といわれても仕方ないのではないでしょうか。

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