「巣ごもり」「国産」「Z世代」、中国ネットセールに見る消費の新潮流浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(2/5 ページ)

» 2021年06月17日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

一企業が始め、「国民的商戦」に変貌

 冒頭でアリババの名前を出しておいて何だが、618セールは元々、中国のECで2位の京東商城(JD.com)が始めたネットセールで、1998年6月18日の会社設立日にちなみ、2010年に始まった(と、中国版Wikipediaのような百度百科に書いてある)。アリババが09年に始めた独身の日セールは、12年ごろには既に中国で広く認知されていたが、「618」が盛り上がるようになったのは、この3〜4年だと思う。

「618セール」は元々中国のEC2位の京東商城が始めたが、今では国を挙げたセールになっている

 独身の日セールは日本で「アリババのセール」と認識され、同社のECサイト「天猫(Tmall)」の取引額が報道されるが、実際にはほとんどのEC企業に加え、百貨店や小売りブランドのリアル店舗など、多様なプレイヤーが同時期にセールを展開し、国民的な商戦になっている。

 618も同様で「京東のECセール」といわれている割には、アリババの方が大々的なキャンペーンを行ったり、EC第三極として注目されている「拼多多(Pingduoduo)」がクーポンをばらまいたりと、実際には商業界全体のセールといえる。

 日本の百貨店やショッピングセンターで夏・冬のセールが恒例となっているように、中国でも6月と11月が年2回の大セールとして、定着した感はある。副作用として、2回のセールの前は買い控えも起きる。かつて消費のピークは連休が多い9、10月で「金九銀十」と呼ばれていたことを考えると、皮肉な話でもある。

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