お金を払ってくれない人への「督促回収」をSaaS事業化 シリアルアントレプレナーが後払いサービスに見いだした商機(1/2 ページ)

» 2021年06月25日 12時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 昨今、異業種からの金融事業参入が盛んだ。決済サービスと、それに伴う後払いサービスには数多くの企業が参入し、ユーザーの利用促進にしのぎを削っている。金融サービスだとは思えないほど洗練されたUIUXと、キャンペーンなどのプロモーションに目が行きがちだが、実はこの裏には、地味だが極めて重要なオペレーションが必要になる。督促と回収だ。

 後払いサービスは、先に決済を済ませて品物やサービスを提供し、あとから代金を支払ってもらう仕組みだ。しかし、しっかり代金を支払ってくれる人がすべてではない。当然、「払ってくださいよ」という督促と、お金を支払ってもらう回収が必要になる。

 この縁の下の力持ち的な業務を支援するサービスを、SaaSとして提供するのがフィンテックスタートアップのLectoだ。

Lectoの小山裕社長

アナログで変わっていない督促回収

 「督促回収は昔からあまり変わっていなくて、払ってくれるまで電話をかけ続けるとか、現地に行って話をするとかしかない」。Lectoの小山裕社長はこう話す。

 後払いサービスの事業の流れを簡単にまとめるとこうなる。まずプロモーションを行って利用者を集める。そして利用者の与信を行い、「お金をしっかり払ってくれる人なのか」を見極める。そして、優れたUIUXを用意して利用してもらう。こんな流れだ。ほとんどの企業は、この部分に全力を費やして他社との差別化を目指す。

 ところが事業としては、これでは完結しない。「与信は大事だが、どんなに精度を上げても8割くらいが限界」(小山氏)だからだ。このあと、サービスを利用したのにお金を払ってくれない人とのやりとりが始まる。いわゆる督促回収だ。

金融取引の流れのイメージ。サービス提供後の督促回収には、複数の事業者が関係し、調整コストがかかる(Lecto資料より)

 小山氏はシリアルアントプレナーで、Lectoは4社目として起業したもの。3社目のGardiaは、事業者が抱える個人向けの信用リスクの保証事業を行っていた。飲食店の無断キャンセルの保証や、高級ブランドバック貸し出しサブスクリプションサービスの持ち逃げリスクの保証などだ。後払いサービスの入金リスク自体の保証も行う中で、回収の難しさを肌で感じてきた。

 「初月は50%未回収、翌月も45%くらい未回収。まさに血を流しながらやってきた」と小山氏は振り返る。試行錯誤を繰り返し、ノウハウを蓄積。最終的には未回収率1%までたどり着いたという。ほとんどの起業は督促回収のノウハウがなく、何が正解かも分からずやっている。そこで、このノウハウをSaaSの形で提供しようというのが、Lectoの督促回収プラットフォームだ。

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