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「料理がツラい」 子育て奮闘中のライオン社員が作った新サービスが、愛されるワケ近所の飲食店が、1週間夕食を作る!(2/3 ページ)

» 2021年06月28日 07時00分 公開
[酒井真弓ITmedia]

 加盟店もユーザーも最初は足で稼いだ。ターゲットは子育て中の共働き世帯。保育園を起点に歩き回り、和食や家庭料理の店を見つけては飛び込んだ。効率など考えず、突っ走った。新型コロナの話題も出始めた頃、テレアポに切り替えた。アポが取れるのは100件中2、3件。「負けまくっていました」と廣岡さんは話す。

 アポが取れる店には特徴があった。お子さま用の椅子や皿が置いてあるようなキッズフレンドリーな店だ。「料理がツラい」と熱く畳み掛ける廣岡さんのスタイルに、「ライオンはUberや出前館の営業とは随分違うね」と言われながら、8から9割の確率で成約した。

 時には、廣岡さんが加盟店の店頭に立っておかずを売った。17時から20時まで立っていると、いろいろなことが見えてきた。その時間帯に店の前を通る人、買わないけど立ち止まる人、表情や聞こえてくる話し声。

 「一番の学びは、当日だと、『テークアウトやってたのね』『もうそこのスーパーで買ってきちゃった』という反応が多いことです。新型コロナの影響でテークアウトを始める飲食店が増えていますが、当日では他に目移りされる可能性もあります。事前予約で確実にテークアウトさせることがこのサービスのポイントになると実感しました」

店頭に立つ、廣岡さん

共感のあるリピートユーザーは“離れない”

 ユーザーの獲得は、友人に使ってもらうところからスタートした。

 「仲の良いママ友なら使ってくれるかなと、ママ友のLINEや保育園のクラスLINEで告知したのですが、やはり良い体験を提供しない限り、リピートはしてくれないんです。そんなに甘くない、と知りました」

 一方で、料理が苦手な廣岡さんに共感する新しいママ友の輪が広がった。保育園に手作りポスターを貼ると、2日で30人以上が登録してくれた。

 1人でも多くの目にとまってほしいと、Twitterとnoteを始めた。

 「そういうのは意識高い系の新規事業開発者がすることだと斜めに見ていました。でも、少しでも宣伝したいとか、思想を伝えたいという思いに駆られてやっていたのだと気付きました。発信するって案外面倒くさいものです。でも皆さん、“いいね”がつかなくてもめげずに発信し続けるじゃないですか。尊敬に変わりました」

 10カ月間の実証実験で、ユーザーは右肩上がりに伸びた。しかし、裏側では7割が人力対応。廣岡さん自身がLINEで客と店の間に入って注文を取り、数え切れないほどミスをした。そこにその人はいないのに、PCに向かって何度も何度も頭を下げ、店におわびのライオン製品を持っていった。

 ミスをしたらユーザーは離れていくと思っていた。しかし実際には、大多数のユーザーが「便利だからこれからも使い続ける、だから改善してね」と言ってくれた。

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