クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

EVの行く手に待ち受ける試練(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)

» 2021年07月12日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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 ではバッテリーにおける閾値を決めるのは何か? それは原材料価格とバッテリー生産のコストである。限られた原材料を多くのバッテリーメーカーが奪い合えば、当然売り手市場になって原材料は高騰する。これが値上がりの理由その1だ。

 もう1つは新規に立ち上げるバッテリー工場のローンチコストである。工場の立ち上げにはばく大な先行投資が必要だ。事業である以上、その先行投資を回収しないわけにはいかない。長く稼働していて、投資のリクープがあらかた済んでいるような工場と、新規で立ち上げる工場を比較すれば、当然新規の工場の方がコストは高くなる。ましてや生産を開始してしばらくは、ノウハウが少なく、生産性も高くない。なので製造に関してもコスト高要因が増える。

 という現状をナチュラルに見れば、バッテリー価格は上昇すると見るのが自然である。少なくとも下がる要因はどこにも見当たらない。

ということでずいぶんと長くなったので、一度このあたりで締めて、次回は世界に渦巻くレアメタル採掘の闇について深掘りしていきたいと思う。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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