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コマツ小川啓之社長に聞くDX戦略 世界の現場を自動化し、遠隔操作コマツ小川啓之社長の野望【前編】(4/5 ページ)

» 2021年07月15日 11時02分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

カーボンニュートラルは必達目標

――今年は創業100周年を迎えた節目の年に当たります。最も進めていきたい社内改革は何でしょうか。

 既に取り組んでいることですが、カーボンニュートラル(脱炭素化)を進めていくことです。中期経営計画において、30年には10年度比で生産と製品のCO2排出量を50%減らし、再生エネルギー比率を50%にすることを経営目標として設定しています。これは私にとって必達目標です。さらに50年に向けてのカーボンニュートラルはコマツにとってチャレンジ目標です。

Honda Mobile Power Pack搭載の電動マイクロショベルPC01(試作車)

 Scope1とScope2(生産の過程で排出する、あるいはエネルギーを購入する段階で排出されているCO2)だけでなく、Scope3(製品の使用)についても取り組みます。コマツが販売している製品から出る排出量の削減はハードルが高いです。ですが9月に発行を予定している統合報告書では、カーボンニュートラルに向けたさらなる取り組みをステークホルダーの皆さまへ示したいと思っています。

 一方で、新興国では排ガス規制もされていない国もあり、50年にカーボンニュートラルのマーケットができているかという問題はありますが、コマツとしては将来を見据えて技術的なロードマップを作り先行研究を進めていきたいと考えています。鉱山機械では電動化の動きが進んでいますが、一般建機の分野では電動化のマーケットはまだできてはいません。その理由は技術的ハードルが高いからです。

 大きなパワー出力が必要になるだけでなく、バッテリーを積むことによる重量が増すことなどがあり、コスト的に採算が取れないのです。自動車は充電設備があるところまで自走できますが、建機では自走が難しいので、給電、配電システムをいかにして構築するかなどの問題もあります。

“排気ガスゼロ”や騒音の大幅低減を実現している「PC30E-5」

――一般建機の電動化の方向性はどうなるでしょうか。

 コマツはハイブリッドの建機を他社に先駆けて08年に売り出しました。国交省の補助金が付いたのでハイブリッドの市場が一時的にはできましたが、補助金がなくなるとハイブリッドのマーケットは大幅に縮小してしまいました。

 一方、気候変動で環境意識の高い欧州ではハイブリッド建機が見直されてきています。コマツの30トンクラスの油圧ショベルの欧州での販売のうち約40%はハイブリッドで、欧州をスタートにしてハイブリッドの市場が徐々にでき始めています。このため、一般建機の電動化のマーケットができてくるのではないかと思います。

 電動化へのアプローチの仕方は、バッテリー電動、燃料電池、水素エンジンなどやり方はいろいろありますが、足りない技術は他社のパートナーと組んでスピードを上げて進める必要があります。いまのうちに先行研究をしておくことが重要で、米国のプロテラ社と組んで中小型クラスの油圧ショベルの電動化の開発も進めており、23年度にも量産化したいと考えています。 

米国プロテラ社と組んで中小型クラスの油圧ショベルの電動化の開発も進めている

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