三菱電機だけでなく、東芝も! 非常識すぎる不祥事の裏に見える「旧財閥」的組織風土の闇トップの交代で済む話ではない(4/4 ページ)

» 2021年07月27日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]
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 特定の人物や一族が作り上げた組織風土は、その人物や一族の影響力を排除することで改革が可能になります。しかし、財閥系組織のような特定の人物や一族ではなく、長年にわたる文化継承的に出来上がった組織風土の改革は一筋縄ではいかないのです。

 この点、東芝と三菱電機はまさに、伝統ある組織継承的風土の中で育ったサラリーマン社長が代々バトンを引き継いできた財閥系企業です。東芝は、今回の不祥事の根源ともいえるトップ自身の愚行に対し、その責任を取らせる形で社長を実質解任しました。三菱電機は、度重なる不祥事の責任を取る形で社長自ら辞任と、ともにトップ交代により世間的には悪しき流れを断ち切り体制再構築を図る姿勢を示しました。しかし、たびたび組織風土由来の不祥事を起こしている両社は、もはやトップの交代だけでその古い組織風土を正せるほど甘くはない、ということになるわけなのです。

トップの謝罪・交代だけで済む話ではない(画像はイメージ)

 組織風土改革は本当に難しいものです。改革は「悪しき風習をやめよう」という掛け声の下で行われることが大半なのですが、基本的にそうしたやり方で風土が改まることはほとんどありません。表向きの改革だけでは、喉元を過ぎればまたいつの間にか形を変えて元に戻ってしまうのです。利害関係者からの被接待を法で禁じても、いつの間にか実質的な被接待が復活している官僚組織の悪しき風習などその最たるものといえます。

 では、どうすればよいのでしょうか。オーナー企業の悪しき風習がトップの交代によって改善可能なのは、古いものに全く異なる新しいものが上塗りされるからであるといえます。ならば、古い伝統を社風の根底に持つ組織では「悪しき風習に代わる新たな良い風習を根付かせよう」としなければ、悪しき風習が根本的に改まることはないわけです。

 従って、東芝にも三菱電機にも、トップの交代だけではなく、あらゆる事象の判断プロセスに今までとは異なる新しい風習を根付かせる具体的な対応が求められるのだと考えます。例えば社内の人間だけで判断してきたことに、必ず社外取締役を加え組織に染まっていない外部の目を入れるようなやり方を根付かせることが最低限必要ではないかと思うのです。

今こそ「新たな風習」を

 東芝、三菱電機両社の相次ぐ不祥事は、同じ昭和的大企業の経営者に対して令和の時代かつコロナ禍でニューノーマルが叫ばれる今こそ、古き悪しき組織風土を改めることが急務であるとの警鐘を鳴らしているかのようです。

 旧財閥グループ企業をはじめ危険風土をはらむ昭和的大企業は、まだまだたくさん存在しているはずです。今般の2社と同じような時代錯誤な不祥事が再度起きるなら、日本企業や国内市場に対する国際的な信用はますます毀損(きそん)することなり、絶対に避けなくてはいけません。昭和的大企業は今こそ襟を正し、「古き悪しき風習」へ「新たな風習」を上塗りし、形式的ではなく真剣に取り組むべき時が来ているのではないでしょうか。まず手始めに、戦前由来の特権階級の集まりである旧財閥グループ金曜会、二木会、白水会の解散あたりから手掛けられてはいかがでしょう。

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。


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