松井証券は2022年2月に、米国株取引に対応することを明らかにした。7月27日に公開した決算説明資料にて触れた。昨今、米国市場の好調にともない、特に若年層で米国株への意欲が高まっている。
松井証券の2021年度の取り組み(決算説明資料より)
松井証券の22年3月期4-6月(第1四半期)の決算は、売上高にあたる営業収益が75億円(前年同期比4%増)、経常利益が31億円(同2%増)だった。株式売買代金が約2%減少したのに伴い、売買手数料収入は9%減少したが、信用取引残高の増加により、貸株料や信用金利などの金融収支が45%増加した。
同社の株式売買代金の市場シェアは10%、信用取引のシェアは買い8%、売り5%。先物取引については、シェア19%となっている。前期から力を入れているFXについては、前年同期の2.5兆円から14.3兆円へと大きく売買代金を伸ばした。ただし、売り買いの差であるスプレッドを縮小しており、収益は2億3900万円から1億9600万へと減少した。
老舗のネット証券として、投資経験者の利用が多い同社だが、昨今は株式取引経験のない初心者の流入が進んでいる。第1四半期の新規口座開設数は月平均で7200口座。うち、約半分が初心者だ。
新規口座開設者のうち半分は投資初心者だが、開設数はネット証券大手2社の楽天証券やSBI証券に水をあけられている
こうした初心者に対応するため、5月には25歳以下の株式売買手数料を無料化。また、YouTubeチャンネルを開設し、登録者は4万人、再生回数は250万再生に達した。FXの訴求も含め、第1四半期でテレビCMなどのプロモーションを強化し、広告宣伝費に4億9200万円(前年同期比62%増)を費やした。
21年度は、米国株への対応のほか、株アプリの機能改善(7月)、スマートフォンサイトの新設(22年初)などに取り組む。
松井証券も25歳以下の株式売買手数料を無料化 信用取引も対象
松井証券は5月6日から、未成年を含む25歳以下の株式売買手数料を無料化する。現物取引だけでなく信用取引も対象。従来は、1日あたり50万円までの取り引きに限り無料だった。
松井証券、優待クロス向け「クロス注文」サービス提供
松井証券は1月30日から、「短期信用取引」「短期信用プレミアム空売り」「クロス注文」の提供を開始する。株主優待の権利取得や、信用取引の返済期限の繰り越し(ロールオーバー)を目的とし、現物の買いと信用の売りをセットで注文できる。
手数料を無料化して証券会社はどうやって利益を出すのか?
ネット証券を中心に、国内で株式売買手数料の無料化の流れが進んでいる。現在も、SBI証券と楽天証券では1日100万円まで手数料はゼロだが、さらにSBI証券と松井証券では25歳以下の完全無料に踏み切った。しかし、売買手数料を無料化して、いったいどこで利益を出すのだろうか? 利用者の中には、「どこかに落とし穴があるのではないか」と不安視する声もある。
多角化進むSBI証券 ネット証券は2強時代に
大手5社と呼ばれるネット証券の中で、SBI証券と楽天証券が他を引き離して2強になってきている。2021年3月期の各社の決算を見ると、SBI証券と楽天証券が、預かり資産残高を大きく伸ばした一方で、マネックス、松井、auカブコムの各ネット証券の伸びは小幅だ。
米国株で差別化図る マネックス証券の清明祐子社長に聞く
20周年を迎えたマネックス証券。米国株についてどう強化し、またグループに入った仮想通貨取引所コインチェックとの連携をどう進めていくのか。4月1日付で社長となった清明祐子氏に今後の戦略を聞いた。
楽天証券、米国株取引件数30倍、取引人数は15倍に
楽天証券では米国株の取引が大きく伸びた。19年1月と12月の比較では、取引件数は30倍に、取引人数は15倍に増加した。6月時点では、前年同期比で取引件数が17倍に増加したとしており、米国株の人気が継続していることが分かる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.