“日本一高い”北総鉄道は値下げできるのか 「やはり難しい」これだけの理由杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)

» 2021年08月06日 13時05分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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不当運賃だと住民が裁判を起こした

 北総線の高額運賃に関して裁判が起きたことは記憶に新しい。提訴したのは前項の図の出典となった『できるだけ 乗らずに済ます 北総線』を著した「北総線値下げ裁判の会」だ。

 いままで北総線の高額運賃に耐えてきた沿線の人々が、「成田スカイアクセスの開業で北総線の通過客が増える。北総線の収益が改善されるから運賃も下がるだろう」と期待した。しかし、京成電鉄と北総鉄道に認可された運賃は下がらなかった。

 そこで国に対して裁判を起こした。2010年8月17日、成田スカイアクセス線開業の1カ月後だ。北総線や京成電鉄ではなく、国を相手とした理由は、「上限運賃制度」による。住民の主張は「国が設定した上限運賃は認められない」だ。この裁判は最高裁まで争われたものの住民側の敗訴で決着した。

 提訴の動きに先んじて千葉県ほか沿線自治体も値下げに向けて動き、補助金を出す形で約5%の値下げが行われた。この時、白井市では補助金拠出について議会の了承を得られず、市長が専決処分で拠出した。これが住民側から問題視され提訴された。こちらは白井市が敗訴し、市長個人が賠償を命じられた。ドタバタしているけれども、結局、この補助金も15年に終了し、北総鉄道は値上げを実施している。

 住民運動はもう1つある。印西市の人々が北総鉄道代替路線バスを構想し、鎌ケ谷観光バスの協力を得て社会実験を実施。「生活バスちばにう」として正式に運行を開始した。新鎌ヶ谷駅から千葉ニュータウン中央駅北口まで通勤時間帯に30分間隔、運賃は330円。北総鉄道より250円も安い。また、コンビニなどで北総鉄道の回数券のバラ売りも続いているようだ。

「生活バスちばにう」路線図(出典:鎌ケ谷観光バス

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