高卒には「職業選択の自由」がない? 大卒より高卒の採用が難しい理由相馬留美の「今そこにある商機」(2/6 ページ)

» 2021年08月21日 08時00分 公開
[相馬留美ITmedia]

高卒には「職業選択の自由」がない

 あまり知られていないが、大卒向けの合同説明会は一般的に行われているにもかかわらず、高卒向けの合同説明会はほとんどない。これは高卒者の就職の仕組みが影響している。

 高卒採用の仕組みはこうだ。

 大卒者の就職協定(大学・短期大学などの新卒予定者の採用活動解禁日を定めた)、行政(旧・文部省・旧・労働省)、経済団体(経団連など)、学校による三者協定は1996年に廃止されたものの、経団連加盟企業では毎年3月に採用情報を公開し、6月に内々定を出すルールになっている。実際にはインターン制度など青田刈りを行うことができる環境にあるため、ルールは形骸化していると言ってよい。

 しかし、高卒者の就職協定はいまだに残っている。行政(文部科学省・厚生労働省)、経済団体、学校団体の三者協定で、7月から8月の間に就職活動を行い、9月に応募が開始するという仕組みだ。

高卒者の就職協定はいまだに残っていて……(提供:ゲッティイメージズ)

 就職活動といっても、生徒が求人票を見ながら自由にあちこちを見て回ることができない。多くの高校生は学校に届く「求人票」の中から先生にお勧めの求人を紹介してもらう。企業側の求人票は、直接企業が学校に訪問もしくは郵送して高校進路指導教員のもとに届く。教師は学校に届いた求人票の中から、生徒に志望先企業を勧める。これが、学校あっせんの慣習である。

 加えて、自由に就職活動ができるかというと、そうもいかない。9月の応募開始時に、高校生が応募できるのは原則一人一社と決まっており(秋田・和歌山・沖縄は複数応募可能)、10月以降に一人二社応募が可能になるところが多い。ごく一部が就職先を自己開拓するが、ほとんどが縁故採用だ。

 企業が高校の紹介を受けて高卒採用をするためには、まずハローワークに求人票を登録し、それをもとに学校を通じて先生や生徒に求人情報を届ける。逆に言うと、9月の応募ルートに乗せるにはこれしかない。

 生徒に情報を提供するのは学校の進路指導教員だ。求人票の中から学校が選抜した企業の情報を、基本的に成績や生活態度などを勘案して該当する生徒に提供する。生徒は学校が紹介した企業の面接を経て内定を得る仕組みだ。これは高校を卒業した生徒ほとんどが就職できるメリットがある半面、実質内定辞退がしにくく、マッチングがうまくいかなかった場合には早期離職という結果になる。

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