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なぜ、7割超の日本企業は「五輪・緊急事態」でもテレワークできなかったのか元凶は「IT」ではない(2/5 ページ)

» 2021年08月25日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 テレワーク導入が思うように進まないのは、不十分なIT環境の整備やペーパーレス化の推進、社内制度の不備、セキュリティ対策など複合的な要因が重なっていることは間違いありません。また、業種や企業による文化の違いといった個別要因も影響しているでしょう。

 とはいえ、ITツールの導入や社内制度の改定など、環境面の整備自体は以前と比較すると、かなり進んでもいるはずです。パーソル総合研究所の調査では「ICT環境が整備されていない」と回答した企業は、20年4月比で8ポイント減の11.9%となっています。それでもなお、テレワーク実施率が3割未満で横ばいということは、環境を整備するだけではテレワークの推進は実現しないということです。

 テレワーク導入をどんどん進めてオフィススペースを縮小したり、働き手が全員テレワークしている企業があるということも見過ごせません。もちろん、そうした企業は、情報通信系業種など、テレワークしやすい業種なのかもしれません。しかし、テレワークを導入できる余地があるのに、まだ推進できていない企業も数多くあるはずです。

 それらの企業でテレワーク推進を妨げている要因とは、一体何なのでしょうか。「テレワークに対する企業のスタンス」を整理した上で考察してみたいと思います。

 テレワークに対する企業のスタンスを整理すると、大きく分けて3つのパターンがあります。

(1)あくまで通勤が原則で、テレワークは認めないというスタンス

(2)テレワークは認めるものの、通勤が「メイン」でテレワークは「サブ」というスタンス

(3)テレワークがメイン、またはテレワークを自由に選択できるというスタンス


まだまだ「通勤」メインの企業は多い?(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

 (1)のスタンスであれば、テレワークが推進されるはずがありません。(2)のスタンスも、通勤スタイルがメインなので、必然的に通勤した方が仕事を進めやすくなるよう業務設計されます。その環境下では、どれだけIT環境を整えたとしても、テレワークだと生産性が落ちてしまう可能性が高くなります。

 (1)や(2)のスタンスをとるような企業でテレワークを導入しても、成果が出なかったり、組織運営がギクシャクしたりとネガティブな結果につながりがちです。緊急事態宣言などの特殊事情によって、仕事の進め方を変えないままうわべだけテレワークを取り入れる「テレワーク・コーティング」をしても、ほとぼりが冷めるとすぐに元の就業スタイルに戻ってしまうことになります。それでは、テレワークを推進しようという気が起こらなくても仕方ありません。

 それに対し(3)の場合、テレワークで生産性が下がるようでは、事業運営に支障が出てしまいます。そのため仕事手法を見直し、テレワークでも通勤の場合と遜色のない、あるいはそれ以上の成果が出せるような“ゲームチェンジ”に取り組む必要が出てきます。

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