クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
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» 2021年08月30日 07時00分 公開

シフトレバーの「N」はなぜある? エンジン車の憂うつと変速機のミライ高根英幸 「クルマのミライ」(2/4 ページ)

[高根英幸,ITmedia]

Nレンジの役割は時代によって変わってきた

 ではNレンジはどういった時に必要となるのか。整備工場などでメンテナンスする時に、エンジンのテスト運転をするためには、停車してアイドリングを続けたり、空吹かしなどを行ったりすることもあるが、これはPレンジでもできることだ。ATの脱着や分解組み立ての際には油圧はゼロになっているので、そもそも電子制御で油圧をコントロールしてシフトしているATではニュートラルにする必要はない(というか自然にニュートラルになる)。

 信号待ちではNレンジにシフトするのか、Dレンジのままがいいのか、という論争もかつては存在した。しかしその後アイドリングストップが普及したことで、この話題もあまり取り上げられることはなくなった。

 ところがカタログ燃費がJC08からWLTCへと移行したため、アイドリングストップ機能のカタログ燃費に対するアイドリングストップの影響は小さくなったこともあって、このところアイドリングストップ機構を採用しないクルマも増えてきた。

 燃費の面からいえば、これはDレンジのままの方がいい。Nレンジの方がエンジンの負担が少なく燃費が良さそうなイメージだが、Nにシフトすると回転が上昇することから燃費軽減効果はあまりない。さらにDレンジのままの方がエンジンに適度な負荷がかかり、燃料の消費が抑えられるケースも多い。

 またDからN、NからDへのシフトによってAT内部の多板クラッチが磨り減ることも抑えられるので、Dレンジのままの方が総合的に考えてエコなのだ。

 停車時にDレンジのままでもAT内部で動力を切り離す、ニュートラルコントロールという機構を採用しているクルマもあったが、これはトラブルの原因にもなったため、近年はほとんど採用を見かけなくなった。もっとも巡航時に動力を切り離すコースティング(滑走状態)を利用しているクルマは欧州車にはまだあって、これは制御面でいえばニュートラルコントロールと同じモノで、メカとしての信頼性を高めて採用している。

 車両故障の際のけん引時にはPレンジでは動かせないし、N以外のレンジでは駆動抵抗が大きくなってしまう構造のATもある。ほとんどのATは駆動輪を路面に設置させたままのけん引では、低速でけん引するよう指定されているが、それはエンジン停止時にはAT内部の制御や潤滑を行うATFの油圧が失われるため、潤滑不良によってダメージを受けることを防ぐためだ。つまりNレンジ以外でもけん引をするケースは有り得るが、けん引は基本的にNレンジで行うのがルールだ。

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