リテール大革命

キャッシュレス化のカギはクレカ! お店を悩ます「加盟店手数料が高い問題」を考える海外の動向は?(4/4 ページ)

» 2021年08月31日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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QRコード決済会社の中小向け手数料が有料化に

 これまで手数料率を無料にしていたQRコード決済大手のPayPayは、10月から中小事業者向けの決済手数料を有料化すると発表しました。加盟店340万カ所のうち半数程度が対象になるようです。手数料率は最低で1.6%、決済機能のみの利用者の場合は1.98%です。クレカの半分程度の手数料です。同社は「21年9月までの3年間は無料とする」という方針を掲げていました。その方針に従っての有料化ですから、仕方ないこととはいえ、中小加盟店にとってはさらなる負担増となります。

 ドコモの「d払い」とKDDIの「au PAY」はもともと2.6%の手数料を21年9月まで無料としてきましたが、auPAYは22年9月までの1年間、無料期間を延長すると発表しました。d払いもそれに追随し、QRコード決済事業者間でもさらに手数料競争が激しくなりそうな様相を呈しています。

 もろちんキャッシュレス化によって小売店店頭ではさまざまなコストメリットがあるのも事実です。

 キャッシュレス化で小売店は人件費抑制や客単価アップなど、さまざまなメリットを享受できるようになっています。さらに、コロナ禍では、できるだけ人と接触しない販売方法が求められるようになり、現金の受け渡しが生じないキャッシュレス決済が重宝されているのは事実です。コンビニの少額決済でもキャッシュレス決済が使われる場面が増えました。小売店にとっては非接触型店舗づくりを進めるためには、キャッシュレス化は必須の取り組みです。

キャッシュレス決済のメリット

 つまり、キャッシュレス化を加速させるには今がベストなのです。当初予定していた25年のキャッシュレス比率40%、そしてキャッシュレスロードマップ(キャッシュレス推進協議会)の示す「2030年に世界最高水準のキャッシュレス社会の実現」に向けて動くことが求められています。

 キャッシュレスの推進は単に支払い方法のことを指しているのではなく、「生活行動シーンのシームレス化」を目標にしています。高齢者や障がい者などを含めてキャッシュレスがまだ身近にない人にもライフスタイル改革をもたらすことを目指しているのです。そのスピードを加速させるための次の一歩が、カード会社間の手数料開示、そして加盟店手数料の引き下げ、結果としてのクレカ利用頻度の増大ではないかと思います。着実にこの流れが進むことを期待します。 

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

 1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。

岩崎剛幸の変転自在の仕事術


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