決済手数料有料化のPayPay、黒字化への道筋(前編)(2/3 ページ)

» 2021年09月01日 07時00分 公開

PayPayの躍進で日本のキャッシュレス比率は上昇したのか

 冒頭にもあるように、コード決済事業者としては後発にあたるPayPayだが、その圧倒的な資金力と営業力で瞬く間に市場を席巻し、19年後半段階ではほぼ独走状態に入ったと考えている。筆者は同年に日本の地方都市などを多くまわったが、どこへ行ってもPayPayの“のぼり”やシールを店頭で見かけるようになり、クレジットカードが利用できない小さな個店においてさえ、PayPayが唯一の「現金ではない支払い手段」として機能している場面に遭遇した。

 こうした地方や中小小売店でのキャッシュレスを推進したのは、全国に配置された何千人といわれる営業部隊に加え、こまめな自治体や商工会連携、そして「(期間限定で)決済手数料無料」を打ち出したキャンペーンの口コミ効果だ。定期的なキャンペーンや利用店舗の拡大は都市部におけるチェーン店やスーパーでの積極的な利用も促し、“普段使いでのPayPay”を定着させる結果となった。

 キャンペーンの派手さで見過ごされがちだが、PayPayが決済シェアで過半数を押さえているのは決してこうしたキャンペーンでの集客のみならず、日常的にPayPayを活用するユーザーが増えたことに他ならない。

 なぜなら、コード決済では2位と3位にd払いやau PAYといった携帯キャリア系サービスが並んでいるが、キャンペーンの有無による順位やシェア変動が激しく、実質的にキャンペーン頼みの状況を生み出している。実際、キャンペーンが提供されないタイミングでは利用が一気に落ち込むという話を各方面から聞いており、ビジネスとして健全な状況にはない。一方で、PayPay自身はキャンペーンの有無による多少の変動はあるものの、大きくシェアや利用が減少することはなく、コンスタントに伸びている。ここが現状のPayPayを表す大きなポイントだ。

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