決済手数料有料化のPayPay、黒字化への道筋(前編)(3/3 ページ)

» 2021年09月01日 07時00分 公開
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 このようにコード決済分野では圧倒的なシェアのPayPayだが、決済取引全体でみるとどうだろうか。日本の年間最終消費支出は300兆円といわれており、いわゆる「キャッシュレス決済比率」はこの数字を分母として、個々の決済手段の金額を足し合わせて算出される。

 経済産業省によれば、20年度のキャッシュレス決済比率は29.7%となっており、年度の半ばである現時点でおおよそ90〜100兆円ほどの決済金額シェアを持つことになる。8月4日に発表されたソフトバンクの4-6月期決算によれば、PayPayの決済金額は四半期で1.2兆円となっており、単純計算で年間4.8兆円となる。つまり、キャッシュレス決済全体におけるPayPayのシェアは5%ほど、現金を含む決済全体では1.7%程度の水準だ。

 複数のアクワイアラやゲートウェイらにヒアリングした結果では「(クレジットカードや電子マネーを含む)キャッシュレス全体に占めるPayPayの割合は1割に満たない。5〜8%程度」という回答が多く、おおよそ計算と合っている。ただ、店舗によってはPayPay比率が高いケースもありばらつきがある。

2021年4-6月期におけるPayPayの取扱高は1.2兆円

 急拡大したといわれるコード決済市場だが、現状の規模感はこの水準であり、大きいかと問われるとまだ難しい。ただ、事業者単体でみればPayPayの規模はかなり大きく、一定の存在感を醸し出している。一例だが、クレジットカードでは業界最大手といわれる楽天カードが2020年度通期で取扱高が11兆円と発表している。このほか、やはり業界でも大手のセゾンカードは年間取扱高が7.2兆円、キャリア事業で競合するNTTドコモの20年度取扱高は5.3兆円であり、PayPayはこれに並ぶ。クレジットカードを基準にPayPayのポジションを説明すれば「準大手」くらいの水準に達する。

NTTドコモの2020年度通期決算。dカード取扱高に注目すると、前年比で大きく伸びていることが分かる

 それでは、こうしたPayPayの状況を踏まえて、後編ではPayPayの黒字化に向けた戦略と、コード決済業界全体への影響について見ていこう。

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