27時間で完売! ダイヤルを回すだけで温めることができる「レトルト亭」が面白い週末に「へえ」な話(3/4 ページ)

» 2021年09月05日 08時02分 公開
[土肥義則ITmedia]

不安要素は「価格」

 工場に足を運べない+現地の人たちはレトルト食品を食べない。この2つの課題を抱えながら、サンプルが完成した。しかし、現物を見て驚くのである。「レトルトパウチを入れる部分は開く構造になっているのですが、その間口が狭かったんですよね。このままだと、商品によっては温めることができません」(佐藤さん)。ということで、つくり直し。このほかにも、ランプの色が違うなど、コミュニケーションがうまくとれなかったことは、こうした結果にあらわれてしまったのだ。

テレワーク中もレトルト食品を温めることができる

 当初の予定よりも遅れたものの、商品は完成。同僚からは「いいね。便利だ」と好印象のコメントが多かったものの、佐藤さんはちょっと違う見方をしていた。「自社で商品を開発をしていると、その商品が“わが子”のようにかわいく見えてくるんですよね。自分だけではなく、周囲も含めてそのような空気が広がっていて、冷静な判断ができなくなっているのではないか」と俯瞰(ふかん)して見ていた。

さまざまなレトルト食品を温めることができるようにした

 当時、売れる確率はどのくらいだと思っていたのか? と質問を向けると「40%」という答えが返ってきた。なぜ、40%なのか。不安要素として「価格」があったのだ。

 マクアケでの先行販売は6000円台だが、一般販売になると7000円を超える。わざわざこの商品を買わなくても、お湯を沸かせばいいだけ、ラップをかけて電子レンジで温めればいいだけ。「自分はこうした面倒から解放されたいので、この商品を開発したのに、消費者は7000円も払うのか」といった不安をぬぐうことができなかったのだ。

ラップをかけて電子レンジで温めるのも面倒

 ネット上で販売するときも、佐藤さんは「開始ボタン」をクリックする直前まで不安を感じていたという。「本当に売れるのか」と。しかし、それは杞憂(きゆう)であった。冒頭でも紹介したように、SNS上で話題に。「これいいな。袋を開けること、湯せんすることは面倒」「これ面白い。レトルト食品をお湯で温めると、他の料理ができないからね」といったコメントが相次ぐ。つぶやきが拡散されればされるほど、先行予約分の数がどんどん減っていったのだ。

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