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» 2021年09月15日 05時00分 公開

社員を「子ども」扱い? 野村HD「在宅勤務中も喫煙禁止」の波紋そのマネジメントは正しいのか(3/4 ページ)

[川上敬太郎,ITmedia]

(3)業務への支障

 3点目の業務への支障については、あまりなさそうです。タバコの火種でうっかりやけどしたり、消しそびれたタバコが火事を引き起こして大切な書類が焼失したり、PCを損壊させたり――ということも考えられなくはないですが、電子タバコであればその心配もまずありません。

 むしろ、気になるのは喫煙を我慢することで生じるストレスの影響です。喫煙している社員は、多くの場合ニコチン依存状態にあります。そのこと自体が問題であることはいうまでもありませんが、「個人の嗜好」として喫煙自体をいったん受け入れる前提で横に置くと、勤務時間帯に禁煙を要請しても、吸いたい気持ちを我慢することでかえってイライラして、ストレスがたまってしまうかもしれません。

 ここまでの「喫煙者自身の健康」「組織の統制」「業務への支障」という3つの観点から考察すると、在宅勤務者に対しても禁煙要請することにメリットはありそうですが、それ以上にデメリットもありそうで、一概に有効な施策とは断言しがたいように感じます。

マネジメントとしての問題点

 さらに、もう1点考慮すべき観点として付け加えたいのが、マネジメントスタイルの在り方です。

 『なぜ、7割超の日本企業は「五輪・緊急事態」でもテレワークできなかったのか』でも指摘した通り、これまでの日本企業は他律的なマネジメントを行ってきました。他律的とは、マネジメント側の指示に従い歩調を合わせて組織を動かす、統率性において優れたスタイルです。これは見方を変えると、社員の意思や権限を最小限に抑え込み子ども扱いしているように感じるスタイルでもあります。そのことが、在宅勤務を含むテレワークや裁量労働制といった自律性が求められる働き方を推進する妨げになっている面があります。

テレワーク中に「監視」する企業も多いのはマネジメントスタイルが原因(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

 社員の健康管理において、受動喫煙の防止やハラスメントの撲滅、長時間労働の是正、勤務間インターバルなどについては、会社がルールなどを設定して他律的マネジメントを働かせなければならない課題です。なぜならば、これらはいずれも場所や時間を会社が拘束していることに起因する課題であり、社員にとっては不可抗力といえる要素が強いからです。

 それに対し、社員自身の喫煙を巡る健康管理は、会社からの拘束とは無関係であり、社員個人に起因する課題です。そこに会社が他律的マネジメントを働かせようとすれば、社員の生活時間にまで入り込んで管理することになります。それは、社員としても抵抗があるはずですし、法律上の制限もあります。この問題を巡る健康管理は、他律的マネジメントでは限界があり、自律的マネジメントを働かせざるを得ないのです。

 在宅勤務とはそもそも自律性が求められる働き方です。そこに禁煙要請するという他律的マネジメントのスタンスを持ち込めば、会社としては社員の健康を思いやる意図だったとしても、社員への拘束を強めようとする会社からのメッセージだと受け取られる可能性もあります。さらにその要請自体が有効な施策なのか疑問符がつくとなれば、戸惑いを感じる社員は少なくないはずです。

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