2025年の大阪・関西万博で、鉄道の路線図はどうなるのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)

» 2021年09月18日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

国際条約と万博と鉄道の進化

 登録博覧会は5年ごとに開催され、テーマは時代に沿った総合的な内容とする。認定博覧会は登録博覧会の間に開催されて専門的なテーマを定めた内容とする。大国際園芸博覧会は、オランダ・ハーグにある国際園芸博覧会が認定した国際博覧会のうち、博覧会国際事務局が認定した博覧会だ。国際園芸博覧会は年に1度開催されており、このうち登録博覧会、認定博覧会と間隔が開いた時期に開催される園芸博覧会が認定される。

 日本は1928年(昭和3年)に国際博覧会条約に調印し、博覧会国際事務局の初期メンバーとなった。しかし開催までに歴史上いろいろな出来事があり、日本の開催は戦後復興を待ってからとなった。開催された万博は、70年の「日本万国博覧会(大阪万博)」、74年の「沖縄国際海洋博覧会(海洋博)」、85年の「国際科学技術博覧会(つくば万博)」、90年の「国際花と緑の博覧会(花博)」、05年の「2005日本国際博覧会(愛・地球博)」である。

 25年の「大阪・関西万博」は20年ぶりの日本開催、35年ぶりの大阪開催となり、70年の「大阪万博」と重複しないように「大阪・関西万博」となったという。ちなみに27年には横浜で「国際園芸博覧会」が開催される。国際博覧会認定にむけて働きかけているけれども、ミネソタがBIEに対して専門博覧会の開催を希望している。

 万博は技術の祭典でもあり、新しい交通機関や技術も紹介される。振り返れば「愛・地球博」ではトヨタが自動運転バス(IMTS)を発表し、専用道路区間を鉄道として国の許可を得て運行した。

愛・地球博で営業運行した自動運転バス「IMTS」鉄道事業として許可を受けていた
専用軌道は道路中央に埋め込まれたアンカーを読み取って進む

 つくば万博では磁気浮上式鉄道HSSTが公開された。HSSTは横浜博覧会で営業運転したのち、「愛・地球博」に合わせて開業した「リニモ(愛知高速交通)」に使われている。「海洋博」では新交通システムのCVS(Computer-controlled Vehicle System)とKRT(Kobe personal Rapid Transit)が短期間とはいえ国内で初めて営業運転を行った。

 70年の大阪万博では、会場への交通機関として北大阪急行電鉄が開業し、開業入口まで臨時支線を開設、地下鉄御堂筋線に乗り入れた。阪急は千里線に臨時駅として万国博西口駅を開設した。国鉄は東海道新幹線「ひかり」の全列車を16両編成にした。64年の東京オリンピック開業に間に合わせた東海道新幹線を世界にお披露目する2度目のチャンスでもあった。動くパピリオンともいわれたという。

 大阪万博会場内では跨座式(こざしき)モノレール、ロープウェイなどが運行されていた。珍しい乗り物だったといえるけれども新しいというほどではない。技術的には「動く歩道」や電気自動車が注目されたようだ。

 さらにさかのぼると、日本の電車の歴史も博覧会からはじまる。BIE設立のずっと前、1890年(明治23年)に上野公園で開催された第三回内国勧業博覧会だ。東京電燈会社が上野公園で展示運転した。日本初の電車路線も博覧会絡み。明治28年の第四回内国勧業博覧会の観客輸送に向けて、京都電気鉄道が営業運転を開始した。

 万博では、会場内で新技術がデモンストレーションされ、交通アクセス路線も最新のシステムが導入される傾向にある。さて、25年大阪万博はどうなるか。

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