興隆するHRテック市場で、採用テックがなぜ今注目なのか?(前編)(3/3 ページ)

» 2021年10月01日 07時00分 公開
[鵜澤慎一郎ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

 その後押しになるのが、政官民が推進するDXである。ポストコロナのリバウンド景気と少子高齢化社会を考えると、日本でも今後、慢性的な人手不足が懸念される。成長著しいハイテク企業など採用を旺盛に進める業種に加えて、不景気業種でもデジタルシフトに呼応するため、デジタル人材だけは採用意欲が高い。

 これまでの自社の新卒採用育成モデルではなかなか育成できないデジタルABC人材、つまりA(アナリティクス)・B(ビッグデータ)・C(クラウド)ができる人達を、各社が中途採用で積極的に採用しようとしている。これまでの手法では、デジタル人材の採用が困難であることは明らかだ。デジタル人材の応募者たちもそこで働くイメージ、活躍できるイメージはできないだろう。

 もう一つの背景は、人事部門がコストセンターである以上、採用業務は拡大の一途でも人海戦術を見直し、自動化、省人化して効率化、コスト削減することが求められるからである。前述のコアHCMでは、従来型のオンプレミス型人事システムがテクノロジーリスクにさらされる前に、新しいクラウドソリューションに刷新する動き(いわゆる2025年問題)が日本でも活発だ。それに連動する形で採用テックも導入し、シームレスに採用からコアHCMへ、そこからタレントマネジメントへと、HRテック3本柱を一貫して導入する先進企業も日本市場で出てきている。

後編に続く)

(参考文献)Worldwide Talent Acquisition Technologies and Services Forecast, 2021–2025(IDC)、Q3 2020 HR Tech Global VC Update(WorkTech)、HR Technology 世界の人事が注目する「HRテクノロジー」2019−2020(リクルートワークス研究所)、HRテック:採用(Speeda)

著者紹介:鵜澤 慎一郎

photo

EY アジアパシフィックピープル・アドバイザリー・サービス 日本地域代表

ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科(MBA)客員教授

事業会社およびコンサルティング会社で20年以上の人事変革経験を持ち、専門領域は人事戦略策定、HRトランスフォーメーション、チェンジマネジメント、デジタル人事。グローバルトップコンサルティングファームのHR Transformation 事業責任者やアジアパシフィック7カ国のHRコンサルティング推進責任者経験を経て、2017年4月より現職。EYと同時に20年9月からビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科(MBA)客員教授に就任し、人事戦略論を担当。主な著書に「ワークスタイル変革」(労務行政・共著)、「HRDXの教科書‐デジタル時代の人事戦略」(日本能率協会マネジメントセンター・共著)が21年11月に発売予定。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.