興隆するHRテック市場で、採用テックがなぜ今注目なのか?(後編)(3/3 ページ)

» 2021年10月04日 08時40分 公開
[鵜澤慎一郎ITmedia]
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 倫理観や人間が持つバイアス(偏見)の問題が今問われている。AIが過去の面接合格・不合格データを機械学習する過程で過去の面接官が潜在的に持っていたバイアスも学習してしまい、AIも同じ過ちを犯すケースがすでに顕在化している。

 例えば、米国ではAIが有色人種に不利な結果判定をする、女性に不利な結果判定をするというケースが出てきている。これに呼応し、米国の一部の州ではAIによる求職者の選考方法を規制する動きや、企業は求職者にAIの利用方法を通知し、仕組みと映像から何を分析するかを説明する義務付けが始まっている。

 欧州では「EU一般データ保護規則」(GDPR:General Data Protection Regulation)に代表されるように、すでに採用、評価、配置といった重要な人材評価に関わる場面ではAI任せにせず、最終的に人間が必ず判断するような指針があり、加えて求人企業は、応募者が求めた場合、個人に関するデータを開示することを命じている。不正確な点の修正や、応募者の要求に応じて30日以内に情報を削除する必要があるなど厳しい規制になりつつある。

 テクノロジーは便利であるが全能ではない。採用テックは業務効率化やユーザーエクスペリエンス、人材のマッチング精度向上に大きな期待ができる一方で、人事の採用担当者や面接官という人間側もさらなる判断能力と高い倫理観が求められることも忘れてはならない。

(参考文献)Worldwide Talent Acquisition Technologies and Services Forecast, 2021–2025(IDC)、Q3 2020 HR Tech Global VC Update(WorkTech)、HR Technology 世界の人事が注目する「HRテクノロジー」2019−2020(リクルートワークス研究所)、HRテック:採用(Speeda)

著者紹介:鵜澤 慎一郎

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EY アジアパシフィックピープル・アドバイザリー・サービス 日本地域代表

ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科(MBA)客員教授

事業会社およびコンサルティング会社で20年以上の人事変革経験を持ち、専門領域は人事戦略策定、HRトランスフォーメーション、チェンジマネジメント、デジタル人事。グローバルトップコンサルティングファームのHR Transformation 事業責任者やアジアパシフィック7カ国のHRコンサルティング推進責任者経験を経て、2017年4月より現職。EYと同時に20年9月からビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科(MBA)客員教授に就任し、人事戦略論を担当。主な著書に「ワークスタイル変革」(労務行政・共著)、「HRDXの教科書‐デジタル時代の人事戦略」(日本能率協会マネジメントセンター・共著)が21年11月に発売予定。


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