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「年功序列」で強い組織はつくれない。北野唯我氏が勧める「強みの経営」根強く残る背景(2/6 ページ)

» 2021年10月04日 08時00分 公開
[小林香織ITmedia]

年功序列ではなく「強み」の経営が必要な理由

 北野氏は、組織が「強みの経営」を採用すべき理由を次のように語っている。

 「組織が持つ唯一の機能が、強みのコラボレーションだからです。人は集団になっても、個々の弱みが消えるわけではない。ただし、各々の強みをかけ合わせることにより、弱みを無効化し、生産性の高い組織に変えていける。理論的に考えると、組織の機能はこれしかありません」

 歴史上の名将の経営を振り返ってみると、まさに強みのコラボレーションが機能していたようだ。

 「例えば、中国の三国時代を築いた曹操は、才能を集め、それを生かす能力に長けていました。彼が採用した人事戦略は、家柄、経歴、素行にこだわらず、強みだけで人材を評価・登用する『唯才是挙』(ゆいざいぜきょ)の思想。その執着心は異常ともいえるレベルで、自分を苦しめた敵や道徳上に問題がある人物でも、能力がすぐれていれば手元に置いたほどです。

 また、徳川家康の人事戦略は、『賢を尊び、能を使う』(けんをとうとび、のうをつかう)の一文に集約されています。『賢』とは人格者で忠義に厚い人物、『能』とは卓越した才能を持つ人物を指し、『賢』は出世させて統治を任せるべき、『能』は日頃の行動には目をつぶり、抜擢してプロジェクトを任せるべき、と捉えられます」

歴史的な名将は、みな「強み」にフォーカスした経営戦略を取っていたという

 一方で、年功序列がもたらす悪影響については、2つの点に触れた。

 「前提として、よくセットで語られる『終身雇用』と『年功序列』について、私は全く別だと考えます。終身雇用は長期雇用を約束することで安心して働けるなどのメリットがありますが、年功序列はほぼメリットがない。というのも、年次によって役職が上がる制度は、何も考えなくてもいい状態を作るから。市場や顧客ニーズは変化しているのに考えなくなる人が増えれば、時代に取り残され、いずれ淘汰されますよね。もう一つは、年功序列の企業で優秀な若手が働く理由が何もないこと。優秀な人材が集まらず、組織力が弱まるという方程式が成り立ちます」

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