三菱商事発のMCデータプラス、知られざる“ユニコーン級"バーティカルSaaS企業とは(5/6 ページ)

» 2021年10月11日 07時00分 公開
[早船明夫ITmedia]

(3)商社シナジーポテンシャル

 最後に同社のユニークなポイントとして、商社の子会社であることの可能性に触れたい。

 バーティカルSaaS企業の発展可能性は、SaaSによるシステム提供にとどまらず、そのプロダクトを核としたさまざまな価値提供にある。

 例えば、調剤薬局向けに電子薬歴システムを提供するバーティカルSaaSスタートアップ、カケハシ(​​記事参照)は、セプテーニ子会社であったParmarketを買収し、医薬品の二次流通市場に参入。非デジタル領域を加えることで業界に更なる付加価値の提供を図っている。

 MCデータプラスは三菱商事というモノやネットワークに長けた親会社を活用して、既存のバーティカルSaaS企業よりも強力にこの動きを加速できる可能性があり、既に取り組みも始まっている。

 現在同社は三菱商事のネットワークを生かして、アシックスと提携。グリーンサイトの登録者に向けて、作業靴のサブスクリプションサービスを提供し、BtoBだけではなく、BtoC Eコマースにも乗り出している。

 「実はアシックスは作業靴における“ハイブランド"。三菱商事の仲介を経て、BtoCに向けた取り組みに大きな可能性を感じている」(中川氏)

 「建設現場は、夏場は暑く冬場は寒い。そのため、自動販売機やコンビニでの飲み物の需要が強く、将来的にはそういった商品の販促などのBtoC分野にも展開可能性を考えている」(飯田氏)

 など、BtoBシステムを起点としながらも、国内300万人いる建設作業員に向けたBtoCサービスの展開可能性が大きい。商社資本ならではのバーティカルSaaS企業として可能性を大きく感じる取り組みだ。

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