三菱商事発のMCデータプラス、知られざる“ユニコーン級"バーティカルSaaS企業とは(2/6 ページ)

» 2021年10月11日 07時00分 公開
[早船明夫ITmedia]

MCデータプラスとはどんな企業か

 MCデータプラスは1999年に三菱商事内でスタートをした新規事業をもとに、2015年から100%子会社として分社化された。

 「三菱商事の子会社ではあるものの、システム開発などのグループに対する機能を担う会社ではなく、純粋な事業成長を求められている」(飯田氏)と言う通り、主力製品のグリーンサイトは大手ゼネコンを始めとし、着々と導入が広まっている。

 そもそも「建設業」は巨大産業であり、プレイヤーやバリューチェーン、業務プロセスは非常に多岐に渡る。建設DXに取り組むプレイヤーも多いが、全方位的なシステムを提供している企業は少ない。

 例えば、当該分野において知名度のあるANDPADは戸建住宅の施工管理が主戦場であり、今年上場を行ったスパイダープラス(記事参照)は非住居建築及びマンションなどにおける「図面管理」を主だったサービスとしている。

 MCデータプラスが提供するグリーンサイトは、建設現場で作成が義務付けられている施工体制台帳の作成を支援するサービスとなっており、建設業に対しすそ野広く展開されている。

 従来、グリーンファイルと呼ばれるこれらの書類は、紙で作成・送付・管理されていた。重層下請け構造を持つ建設プロジェクトにおいては、元請けや一次請け、二次請けなどを多くの企業や人が介在し、書類のやりとりや集約は煩雑だ。そのような課題に対するデジタル化の需要は大きく、2000年代初頭から先鞭(せんべん)をつけて取り組んできたのがMCデータプラスである。

 事業開始当初から着々とユーザーは増えており、サービスの継続率も「業界標準として使われているため、小規模事業者の統廃合以外での解約はほぼない水準」(飯田氏)という状況にあり、建設業界においてはデファクト的に利用されるサービスとなっている。

 情報・通信分野専門の市場調査機関であるデロイト トーマツ ミック経済研究所が公表する「ConTechクラウドソリューション出荷金額」でも19年から3年連続でのシェアNo.1となっており、ConTech(Constriction Technology)企業として国内屈指の規模となっている。

 同社が公表する21年3月期の売上高は35.9億円であり、「売上成長は前年比およそ120%程度」(飯田氏)と順調な成長を見せている。

 国内で上場をしている建設業向けのバーティカルSaaS企業スパイダープラスのPSR(時価総額を売上高で割った指標)は、21年9月末時点でおよそ32倍であり、この水準をMCデータプラスに適用すると1000億円を超える企業価値が想定される。

 ベンチャーキャピタルなどから資金調達を受ける企業ではないものの、隠れたユニコーン級企業だ。

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