コンビニも注目する「カレーパン」ブームのなぜ 専門家が指摘する“必然性”とは火付け役はどこ?(2/3 ページ)

» 2021年10月22日 08時30分 公開
[熊谷紗希ITmedia]

なぜ「焼きそばパン」ブームは起きないのか?

 同じ総菜パンの焼きそばパンやコロッケパンには、なぜブームが来ないのか。その理由について宮脇氏は「アレンジ”力”」と説明する。

 「先ほど、具が巨大化したカレーパンの話などをしたと思うのですが、カレーパンはアレンジのポテンシャルが高い商品なんです。揚げカレーパンに焼きカレーパン、チーズを上にかけたものなど多くのやり方があります。

 カレーライスも黒いカレーやグリーンカレーなどバリエーションが豊富です。工夫の幅が他のパンと比べて格段に広い点が強みだと思います」(宮脇氏)

カレーライスもバリエーションが豊富(画像:ゲッティイメージズより)

 確かに街の専門店でも、クルトンをまぶして食感を強調するカレーパンやカレーうどんが入ったものなども目にすることもある。専門店を多く見かけるようになったが、ブームの火付け役となった店はどこなのだろうか。宮脇氏が注目しているのは神奈川県鎌倉市にある「Giraffa(ジラッファ)」だという。

カレーパンブームの火付け役「ジラッファ」

 ジラッファは、観光客の多くが食べ歩きをする街として有名な鎌倉の「小町通り」に面しているお店。もともと店主がカレーパン好きだったこともあり、「カレーパンと言えば」でみんなが想起するようなお店を出そうと決めた。ホテルや和食料理店、カレー専門店などで10年以上働いていたシェフを採用し、20年12月に店をオープン。

ジラッファの外観(画像:ジラッファ提供)

 過去最高で1日に1500個売り上げるほどの人気ぶりだ。コロナ禍で観光客が減っているものの、平日では300〜400個ほど、休日は600〜800個ほど売れる。専門店の出店数増加やコンビニがカレーパンの販売強化に努める中で、ジラッファの差別化戦略は「揚げたて」にあるという。

 今は、セブンが揚げたてカレーパンを提供してはいるものの、オープン当時、揚げたてを食べられる店は少なかった。店頭で揚げたてを提供することで「おいしい」と話題になっていった。また、具にチーズをたっぷり入れることで、食べたときに伸びるチーズを写真に撮ってインスタグラムに上げる人もいるという。

ジラッファのカレーパン(画像:ジラッファ提供)

 鎌倉という土地柄も人気を押し上げる。関東でも有数の観光地のため、幅広い世代の人が訪れるのだ。加えて、校外学習など学校の行事も多く、食べ歩きの店が多い小町通りは常ににぎわっている。

 ジラッファ以外のカレーパン専門店も、ツワモノぞろいだ。ホリエモン発案の「小麦の奴隷」のザックザクカレーパンは開業3カ月で1万食を達成。全国各地に出店している。また、沖縄発の「もとむのカレーパン」はA5ランク黒毛和牛を使用したカレーパンを販売していて、他社との差別化戦略を取りながら拡大を続けている。

小麦の奴隷の商品(左)、もとむのカレーパンの商品(画像:リリースより)

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