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「年末調整の電子化」を進める手順は? 改正ポイントも紹介【令和3年版】(3/5 ページ)

» 2021年10月27日 07時00分 公開
[企業実務]

 特にマイナポータルによる連携(以下、「マイナポータル連携」といいます)を目指す場合、従業員がマイナンバーカードを取得するために要する日数、民間送達サービスの開設に要する期間を考慮すると、年末調整時期(11月頃)の2カ月前(9月頃)までには、従業員への周知をしたほうがよいでしょう。

【2】会社が行うこと

(1)従業員へマイナンバーカードの取得依頼

 従業員がマイナポータル連携で控除証明書等のデータを入手するには、マイナンバーカードが必要になります。マイナンバーカードを取得していない従業員に対して、取得依頼をします。

(2)実施方法の検討(電子化の範囲など)

 年末調整の電子化といっても、会社によってワークフローや利用している給与システムが異なるため、その実施方法も異なります。具体的には、次のイ〜ハの事項を事前に検討する必要があります。

  • イ 電子化の範囲

 完全電子化するのか、部分的に電子化するのかを検討します。電子化の範囲によって、国税庁ホームページでは4つの案が紹介されています(図表1)。

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 案(1)は、全ての手続きがデータで行われ、かつデータ保存が可能となるものです。

 従業員が、マイナポータル連携または保険会社等のマイページから控除証明書等のデータを入手し、控除申告書データを作成したうえで会社へ提出します。電子化による効率化の効果がいちばん高いケースです。

 案(2)は、従業員によるマイナンバーカード・控除証明書等のデータの取得が難しい場合に有効なケースです。

 従業員は、控除証明書等を書面で取得し、申告書データを作成して給与担当者に提出します。申告書データは電子保存が可能ですが、控除証明書等は書面で保存する必要があります。

 案(3)は、従業員が控除証明書等のデータを入手し、控除申告書を作成、それぞれ印刷して書面で給与担当者へ提出します(控除証明書等はQRコード付証明書にして提出する必要があります)。

 給与担当者は、提出された書面の申告書と控除証明書等をもとに給与システムへ入力します。データ形式で申告書の提供を受けるための要件を満たすことができない場合に有効です。

 案(4)は、従業員が控除証明書等を書面で取得し、申告書を作成・印刷して給与担当者へ提出します。給与担当者は、提出された書面の申告書と控除証明書等をもとに給与システムへ入力します。

 従業員によるマイナンバーカード・控除証明書等のデータの取得が難しく、データ形式で申告書の提供を受けるための要件を満たすことができない場合に有効です。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)
  • ロ システムの選択

 年末調整を電子化するにあたって、利用するシステムを選択します。現在、民間の給与システム等を利用していない会社は、国税庁が配布している無償の年調ソフトを検討するとよいでしょう。マイナポータル連携、控除証明書等のデータのインポート機能については、標準で搭載されています。

 すでに何らかの民間の給与システム等を利用している会社は、そのシステムが、マイナポータル連携や、控除証明書等のデータおよび年調ソフトで作成した控除申告書データのインポートができるかを確認します。もしできない場合には、システムの入替えまたは前述した部分的な電子化を検討するとよいでしょう。

  • ハ 従業員が利用するデバイスの選択

 従業員が年調ソフトを利用して年末調整の申告書データを作成する場合には、どのデバイスを使って申告書データの作成を行うかを決める必要があります。

 1つには、勤務先のパソコンに年調ソフトをインストールし、各従業員が入力する方法があります。年調ソフトは、1台のパソコンにインストールすれば複数人で利用することが可能ですので、1人1台パソコンが準備されていない会社に有効です。

 また、社内で手続きするので、操作方法等が分からない場合には、その場で確認することができます。

 もう1つは、従業員が各自利用しているパソコンまたはスマホ(個人所有を含みます)に年調ソフトをインストールし、申告書データを作成する方法です。この方法は、いつでも・どこでも作成できることがメリットです。

 一方で、セキュリティの設定を事前に周知するなど、注意が必要です。

(3)給与システム等の改修または購入の検討

 さらに、給与システム等の改修または購入の検討を行う必要があります。

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