鳥貴族では10月から冬の限定メニューとして、日本中の名物料理をアレンジした「鳥貴族で旅気分」を展開する。具体的には、京都の「もも西京焼」、神奈川の「横浜鶏焼売」など4つのフードと、鳥取の「梨チューハイ」など3つのドリンクを提案している。
旅行、帰省を自粛している人たち向けの企画で、郷土料理を大量に特集する企画は、コロナ前には見られなかった新しい傾向だ。
また、7〜10月には、日本水産が18年にブランド化した国内陸上養殖の業務用バナメイエビ「白姫えび」の串焼と、丸ごとエビマヨを販売。白姫えびメニューを注文した人を対象に、鳥貴族食事券2000円分が当たるキャンペーンを実施した。
白姫えびは殻ごと食べられる柔らかさが特長で、他の企業とコラボして、再来店を促す売り方となっていた。
同社では、Twitter、YouTubeなどSNSを使った広告宣伝のノウハウ蓄積にも励んでおり、これまでになかったメニュー提案、企業コラボなど、プロモーションの方法も工夫が見られる。
鳥貴族HDでは、10年後には「鳥貴族のDNA(チキン、均一価格、国産)を持った業態」で「グローバルチキンフードカンパニーとなる」というビジョンを掲げている。大倉社長は今後も、政府、都道府県の自粛要請には応じる姿勢であることを明言している。よほど深刻な感染拡大が起こらない限り、業績回復の道筋は見えてきた。多少の緊急事態やまん防の発動が何回かあっても、一時的な財務悪化に目を瞑れば、数年で成長軌道に戻るだろう。
鳥貴族の店舗は、テーブルの席間がゆったりしていて密な感じはない。しかも、透明なアクリルやビニールのシートで仕切って、飛沫が飛ばないように席をつくっている。顧客入店時の消毒はもちろん、タッチパネルで注文するシステム化が進み、塩・唐辛子のような薬味もテーブルに並べずタッチパネルでリクエストするように変わった。感染症対策に関しては、基本が押さえられている。
鳥貴族のようなコロナ前に好調だった業態でさえも、大きく苦戦した。今期に赤字が解消して十分な利益が出るほど顧客が戻ってくるには、昨年のGoToイートに匹敵する、国を挙げた強烈な需要喚起のキャンペーンが必要ではないか。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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