そしてアリババは今年、戦い方を一変させた。華々しいイベントや数字の発表を大幅に控え、「低炭素のダブルイレブン」「公共のダブルイレブン」というスローガンを前面に打ち出したのだ。
ECプラットフォーム天猫(Tmall)には省エネ製品や低炭素製品を展示する専門会場が設置され、対象商品を購入する際に利用できる「エコショッピングクーポン」が計1億元(約17億5000万円)分発行された。
消費者間マーケットプレイス「タオバオ(淘宝)」はダブルイレブンに合わせ文字や写真のサイズを大きくし、音声で商品を検索できる「シニアモデル」をリリースした。また、ユーザーが自身の寄付履歴などをSNSでシェア・閲覧した件数に応じて、アリババが1人暮らしの高齢者、農村に住む出稼ぎ労働者の子ども、低所得者に寄付する仕組みも今回のセールで導入された。
「低炭素社会」と格差是正を推進する「共同富裕」は中国の重要政策で、特に今年後半以降は政府系メディアが度々啓発記事を出している。
この1年、中国当局はデータや富が集中するプラットフォーマーへの規制を強めており、アリババはその象徴的存在でもある。同社は今年4月、独占禁止法違反で182億2800万元(約3000億円)の罰金を命じられた。
いつもと違う雰囲気の11月11日早朝には、国営メディアを通じて習近平国家主席のビデオ演説が公開された。
「ここしばらく、中国当局は独占禁止法の整備を進め、一部業界への規制を強化している。これは中国市場経済の健全な発展のために欠かせないもので、グローバルスタンダードでもある。われわれは『公用制経済』の発展にまい進し、『非公用制経済』は一切推奨、サポートしない」
11月11日にアリババが沈黙し、習主席が独禁法強化のメッセージを配信する。これを転機をいわずして何なのか。
これまでダブルイレブンはプラットフォーマーの販売力と技術力を誇示する場だったが、現在の環境を踏まえるとアリババが「利益」を前面に出すのはリスクが高い。「社会に貢献する」セールを打ち出すのは当然のことだし、成長が義務付けられた雰囲気は今後変わっていくだろう。
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ジャック・マー氏“失踪”直前のスピーチ全文(前編)Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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