クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

トヨタは、1800億円の部品代高騰をどうやって乗り切ったのか 原価改善のファインプレー池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2021年11月15日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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営業利益は2兆8000億円見通し

 さて、もうこの辺りでトヨタの決算の本質的な部分はほぼ説明してしまったのだが、この先は例のごとくトヨタが強い話を検証していくだけになる。ちっと退屈かもしれない。

地域別営業利益では日米を大きく伸ばした(トヨタ決算資料より)
中国は台数を落としたものの利益は伸ばしている(トヨタ決算資料より)

 所在地別の営業利益は、日本、北米、欧州、アジア、その他で例外なく伸びている。特に日本と米国の伸びが大きい。数がはけるマーケットで強いということだ。連結決算対象外の中国では台数が若干落ちたものの、利益は大きく伸びている。

 株主配当は前年実績に15円積み増して120円。自己株式も1500億円取得する。これは要するに発行済み株式を少なくして、株の希少性を高めることで、株価を支える意味がある。さらに1株を5株へと分割することで額面を下げ、投資し易い環境も整えている。まさに余裕の成せる技だ。

 さて、では通年見通しはどうなのか?

連結販売台数見通し(トヨタ決算資料より)

 台数は前回見通しより15万台下げて、855万台。それでも前期実績の764万6000台よりはかなり多い。営業収益は前回見通しと変わらず30兆円。営業利益は3000億円増えて2兆8000億円。利益率も1.0ポイント増えて9.3%。税引き前利益に至っては3300億円増の3兆4400億円である。見ていて驚きを通り越して笑えてくる。

22年3月期の見通し(トヨタ決算資料より)

 何よりも驚くべきは、その収益体質の改善だろう。解説はいるまい。もう無人の野を行くがごとき快進撃で、筆者には言葉もない。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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