強すぎる「ダイソー」と「セリア」 イオンが「キャンドゥ」と組むと何が起きるのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)

» 2021年11月24日 08時29分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

上位2社と下位2社の差が広がる

 コロナ禍で、家庭用雑貨を主力とする100円ショップはどのような影響を受けたのか。商業施設の中に入居する店は、緊急事態やまん防(まん延防止等重点措置)などによって休業や時短の影響を受けた。しかし、外出を控えて家で過ごす時間が増えたことを背景に、全体としては好調に推移した。内容をよく見ると、大手4社が寡占する市場で、上位2社と下位2社の差が広がっている。

業界トップのダイソー

 業界最大手の大創産業は非上場で業績を明かしていない。しかし、同社公式Webサイトによると年商は5262億円(21年2月末現在)となっており、前年の5015億円(20年3月末現在)から4.9%増となっている。なぜ、20年4月から21年2月までの11カ月の年商が記されているのかは不明だが、決算月を変更したと目される。もし21年3月末までの年商をカウントしていれば、5740億円程度に達し、2桁の伸び率になっていた可能性がある。国内店舗数は3620店(同)、海外2272店(同、24の国と地域)となっている。

 業界2位のセリアは、年商2007億円(21年3月期)。前期比10.6%増と2桁増を達成するほど好調だった。22年3月期中間決算で売上高1034億円(前年同期比6.2%増)となっており、営業利益も105億円(同8.6%増)と順調だ。店舗数は1820店(21年9月末現在)。

業界2位のセリア

 それに対して、3位のキャンドゥは年商730億円(20年11月期)で、前期比2.4%増にとどまった。21年11月期は第3四半期までで、売上高は前年同期比0.1%増の551億円と伸び悩んでおり、営業利益は26.4%減の10億円だ。巣ごもり需要の増加を残念ながら業績に反映できていない。店舗数は1141店(海外FC7店を含む。21年8月末現在)。

 ちなみに、4位のワッツは21年8月期の決算において年商が507億円で、前期比4.0%減となってしまった。営業利益も17億円で前期比5.6%減だった。店舗数は4ブランド「ワッツ」「ワッツ ウィズ」「ミーツ」「シルク」合わせて1364店(21年8月末現在)。

業界4位のワッツ

 なお、コンビニのローソンストア100は671店(21年8月末現在)あるが、品ぞろえからいわゆる100円ショップのカテゴリーでなく、コンビニ業界に入る。そうなると、100円ショップ業界5位で「フレッツ」「百圓領事館」を展開する音通の21年3月期の年商は130億円(前期比12.5%減)となっていて、キャンドゥ、ワッツと差が大きく開いている。4社寡占体制は明らかである。

 大創産業は国内店舗数でおよそセリアの2倍あり、キャンドゥとワッツの3倍ある。

 また、セリアの利益は、キャンドゥやワッツと比較して1桁違う。つまり、大手4社といっても、実態は大創産業、セリアの2強なのだ。一方、キャンドゥ、ワッツの“2弱”との格差がコロナ禍において拡大している。

 この状況にキャンドゥは強い危機感を抱いており、イオンによるTOBは渡りに船であったのだ。

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