強すぎる「ダイソー」と「セリア」 イオンが「キャンドゥ」と組むと何が起きるのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)

» 2021年11月24日 08時29分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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海外進出のチャンスも

 イオンは、中期経営計画で「5つの変革」を掲げる。デジタルシフトの加速と進化、サプライチェーン発想での独自価値の創造、新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化、イオン生活圏の創造、アジアシフトのさらなる加速が具体的な中身だ。2030年へ向けた持続的成長を目指し、グループ内の業態の新たな発展性を検討している。

 同社は21年5月下旬、キャンドゥ創業家が所有する株式譲渡に関する第一次入札プロセスへの打診を受けた。精査した結果、両社の事業・経営ノウハウを共有することで、効率的な事業運営が可能となり、ビジネスモデル強化につながるとの考えに至った。そして、このプロセスへの参加を決断した、とのこと。

 7月中旬に公開買付を行う旨の一時意見表明書を提出。その後、第二次入札プロセスへの参加のレターを受け、8月下旬までデューデリジェンスなどを実施。9月10日に最終提案書を提出した。

 9月中旬に最適な売却先であるとの結論をもらって、10月14日には株式譲渡契約を締結した。

 キャンドゥとセリアは、なぜ利益率に大きな差があるか。セリアが業界に先駆けて自動発注を整備し、1日がかりの仕事をわずか30分に短縮するなど、IT活用が主因といわれる。キャンドゥはイオンとの協業で、ECショップの強化にすぐにでも取り組むことになるだろう。100円ショップは1品の単価が低すぎて、通販が難しいが、最適な解を探し当ててほしい。

加工食品(左)と観葉植物

 商品面でも、ダイソーは100円にこだわらず、相対的に安価であれば1個1000円の商品も売る。キャンドゥも全てが100円均一ではなくなっているものの、価値あるものを200円、300円で売るノウハウで、ダイソーに圧倒されている感がなきにしもあらず。商品を見直して、ラインロビングできる、キャンドゥでしか売っていないものを強化してほしいものだ。

 イオンは、海外店も数多くあり、キャンドゥでは今までほとんどできていなかった海外進出のチャンスも開けるはずだ。

 このように、イオンによるキャンドゥのTOB、子会社化は両社にとって“福音”になる可能性が高い。イオンはキャンドゥの経営の独自性を保ちながら、上手に改革をリードしてほしいし、成功したウエルシアやオリジン東秀の前例からも期待感が膨らむ。

キャンドゥの紙パックジュースホルダー(左)と充電式モバイルバッテリー(550円)
コアラのマーチとのコラボ(左)と高額でも売れるアウトドアグッズ
キャンドゥで人気 ラブホームとのコラボ商品群
帝国データバンクがまとめた100円ショップの成長性(出所:リリース)

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。


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