強すぎる「ダイソー」と「セリア」 イオンが「キャンドゥ」と組むと何が起きるのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)

» 2021年11月24日 08時29分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

イオンが100円ショップに魅力を感じる理由

 イオンにとっても、100円ショップは魅力のある業態だ。

 同社の21年2月期決算では、連結の年商は8兆6039億円。前期より3億円ほど減った程度で、横這いだった。また、営業利益の1506億円は、前期比30.1%減だった。食品スーパー(SM)が好調だったのに対して、3密(密閉・密集・密接)を避けなければならないのでモールの集客策が打てず、休業や時短を余儀なくされた影響が出た。総合スーパー(GMS)も不振から脱せなかった。

イオンモール上尾(出所:イオンモール公式Webサイト)

 22年2月期中間決算では、売上高4兆3449億円(前年同期比1.7%増)と微増ながら過去最高を更新。営業利益は778億円(同129.4%増)で、最終利益でも黒字転換した。大都市部で緊急事態、まん防が続いたわりには、対処法が確立してきた効果が出ている。特に、デベロッパー部門の売り上げ1787億円(20.5%増)と、サービス・専門店部門の売り上げ3459億円(13.8%増)の伸び率が高い。感染対策をしっかり取ってモールを開け、テナントの編集力で集客する「イオンモール」のビジネスモデルが機能すれば、イオンは強いことが証明されている。

イオンモールの店内(イメージ)(出所:イオンモール公式Webサイト)

 イオンモールがより賑わうためにどうしても欲しい専門店の1つが、コロナのような疫病にも強くて成長力のある100円ショップなのだ。ただし、100円ショップのこれ以上の寡占化はイオンにとって望ましくない。なぜならイオンは、イオンモールがどこに行っても同じじゃないかといわれることを嫌っており、1つ1つのモールが個性的な輝きを放つようにしたいと考えているからだ。確かに、ダイソー、セリアは優れていて入居してもらいたいが、どこに行ってもそればかりでは差別化にならないのだ。

3COINS

 また、大きなモールならば、2〜3店程度「3COINS」のような300円ショップを含めて、100円ショップが入っていても良い。現に、「イオンモール幕張新都心」(千葉市)では、グランドモールとアクティブモールにダイソーが出店し、ファミリーモールにダイソー系の300円ショップ「スリーピー」が出店している。このように、大創産業の店が3店入っている。300円ショップは、3COINSがグランドモールに、「イルーシー300」がファミリーモールにも入っている。

 ワッツは大規模店舗の間にある、小さなスーパーなどに出店する隙間狙いと戦略がはっきりしている。イオンが業績が伸び悩んでいるキャンドゥをテコ入れするために投資するのは、合理的な選択なのだ。

 「100円ショップ業態は、イオングループの商業施設において重要な業態と認識している。今後のイオングループの活性化に必要不可欠な“エッセンシャル業態”として、以前よりさらなる協業について検討してきた。キャンドゥとイオンの既存業態とを組み合わせることで、ラインロビング(編集部注:特定のカテゴリーで品ぞろえの専門性を高めて差別化すること)による大幅な事業拡大が見込める」(イオン・広報)と、イオンではキャンドゥの傘下入りへの期待の大きさを表明している。

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