攻める総務

【後編】分からないことだらけの「インボイス制度」で経理業務はどう変わる? Peppolの基本も含めて徹底解説対談で学ぶ電帳法とインボイス(4/4 ページ)

» 2021年11月29日 08時00分 公開
[西田めぐみITmedia]
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――Peppolと電子インボイスは別物でしょうか?

Sansan 柴野:イコールではないですが、包含されているイメージです。Peppolは電子文書をネットワーク上でやり取りするための国際標準仕様です。今は、請求書に書かれている情報は人が確認していますよね。それが「紙」でも電子でも、会社名がどれで住所がどれで……と目視で判別している。

TOMA 持木:国内の商取引に関して、請求書のフォーマットはバラバラですからね。いろいろなシステムで、いろいろな請求書が使われています。

Sansan 柴野:そうなんです。だけど、Excelやシステムを使って電子で請求書を作っているのに、データ活用ができていない。それって、おかしくないですかと。そこで、請求書でもデジタルtoデジタルの世界を築くために登場するのが、Peppolなんです。

 例えば会社名はここに書いてある、じゃあ会社名のコードは001番に決めます。だから、001番となっているこの項目は「=会社名」ということで、みなさん認識して使ってください――ざっくりいうと、こののような共通仕様がPeppolで定められてます。

photo 今までは各社でバラバラのフォーマットだった請求書がPeppolで変わる?

 請求書を発行する側も、001番の部分に会社名を入れる。そうすると、受け取った側もシステム上で001番に書かれているものが会社名だと分かる。このように、双方がPeppolに準拠したシステムを使っていれば、デジタルだけで完結でき、データ活用も進みます。

TOMA 持木:20年には、Peppolをベースとした国内共通の請求書の仕様を策定するために、電子インボイス推進協議会「EIPA(エイパ)」が発足しました。EIPAには、デジタル庁はじめ、幹事法人に就任されているSansanさんを含む多くのベンダーが参画していますね。

Sansan 柴野:はい。EIPAはPeppolの仕様を普及促進させることで、デジタルで最適化された業務プロセスを構築することを目的としています。勝手に「はい、これが請求書の共通仕様です」と言っても、誰も使わない。なので、EIPAという一つの協議会に政府も民間企業も一緒にジョインして仕様を検討することで、今後は各ベンダーがそれに準じた形でシステム開発をしてください、サービス提供をして企業に広めてください、そのようなステップを想定しています。

TOMA 持木:当社も先日、EIPA入会の内諾をいただいたところです。われわれは経理周りの業務改善コンサルタントを得意としていることもあり、EIPAに参画されているシステム会社のリストを見ると、Sansanさん含めてほぼパートナーなんですよね。

 われわれとしては、Peppolの仕組みをしっかり理解した上で、推進役としてこれから多くの企業へ広めていく。そのような役割を担っていると考えています。

Sansan 柴野:持木さんがいうように、EIPAを通してPeppolをどう広めていくかは今後課題だと思います。Peppolは義務化じゃないので、乗るか乗らないかは企業の自由なんです。だけど、乗った方が便利だし、今後の業務改善に大きく役立つはずです。

TOMA 持木:電帳法もインボイス制度も、それ自体に対応することだけを考えるのではなく、先にいかに「生産性を高めるための仕組みづくりをするか」が重要だということですよね。乗り遅れると法律や制度ばかりが厳しくなって、どんどん不採算な業務フローになってしまう可能性がありますから。

 今回のような法や制度改正を契機に、積極的にデジタル化を進めて二度手間三度手間がないような仕組みを構築していく。そのためにも、Bill Oneのようなソリューション活用をご案内しつつ、お客さまの業務改善のお役に立つことが、当社の使命だと思っています。

Sansan 柴野:おっしゃる通りです。改正電帳法やインボイス制度は新しく登場したものなので、特に経理業務は前提を変えざるを得ない状況にあります。今足元だけ見て電帳法に対応して、また2年後インボイス制度のときに業務フローを見直して……それでは負担が大きい。

 われわれベンダーとしては、時流に柔軟に対応できるシステム開発に今後も取り組みながら、みなさんのスムーズなデジタルシフトを支援したいと考えています。持木さんがいうように、先まで見据えた上で、ぜひ自社に適したソリューション導入をご検討いただきたいと思います。

持木健太氏

TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役

TOMA税理士法人 ITコンサル部部長

中小企業診断士

立教大学理学部物理学科卒業。DX推進の総責任者として、テレワーク環境構築・ペーパーレス化・電子帳簿保存法対応・ビジネスモデルの再構築などで活躍中。企業の労働生産性向上や付加価値向上を目指して、中小企業から上場企業まで幅広く対応している。

柴野亮氏

Sansan株式会社

Bill One Unit プロダクトマーケティングマネジャー/公認会計士

前職のPwCあらた有限責任監査法人では、上場企業や外資系の会計監査、内部統制監査に従事。2014年にSansan株式会社へ入社。財務経理として、経理実務、資金調達、上場準備業務に従事。その後、請求書がもたらす会社全体の生産性低下を解決するために、クラウド請求書受領サービス「Bill One」を起案し、現在プロダクトマーケティングマネジャーを務める。

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