リテール大革命

LINEミニアプリにスカウター? パルコ・H2OリテイリングのDXリーダーが語る、物があふれた時代の百貨店長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」 “百貨店の未来”編(5/5 ページ)

» 2021年12月01日 07時00分 公開
[酒井真弓ITmedia]
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「作った物を売り切らなきゃいけない」から生じる違和感

小山: 実際、人と人がコミュニケーションする場ならではの価値を高めていかないと、リアル店舗はデジタルに置き変えられるものがかなり多いですよね。

長谷川: リアル店舗に行って、にっこり笑って「似合ってますよ」と言ってもらえたとしても、「あなた初対面で私の何を知っているのよ?」と思ってしまうこともありますしね。

林: テンプレ通りの話をしているだけというのが透けて見えてしまうんですよね。人と人がコミュニケーションするからこそ生まれる新たな発見こそ、接客の価値だと思います。

 私は青い服ばかり選んでしまうんです。自分でもそれがしっくりくると思っているのですが、たまに青以外の服を勧めてくれるスタッフさんがいるわけです。それが妙にハマったりすることもあるんですよね。

小山: 今のAIは、そういった挑戦的なレコメンドはできないんです。リスクを負わないように学習させられますからね。だから「その発想はなかったわ」という提案は人間の方が得意です。

 でも、いつかAIもそのスキルを獲得する。そのとき人間は、AIより一歩先にいなければなりません。それには、にっこり笑って「お似合いですよ」ではなく、「これは似合いませんが、こちらはお似合いですよ」とプロの目線で伝えるという接客の本質に立ち返り、突き詰めていくのが重要なんだと思います。

取材の様子。左から小山徹氏(エイチ・ツー・オー リテイリング執行役員)、林直孝氏(パルコ執行役員)、筆者、広報担当者、長谷川秀樹氏

林: 今の売り方は不自然なんです。作ったら、作った個数だけ売り切らなければいけない。だから、「お似合いです」と言わなければならないし、お客さまもそれに違和感を覚えるわけですよね。

 これからは、似合うものを一緒に探す、ないなら一緒に作るということが求められるようになると思っています。一人のお客さまにパーソナライズされた本当に欲しい物を一緒に作る。スカウター越しにそのお手伝いをすることが、接客になっていくんじゃないかと思います。

動画で見る「IT酒場放浪記」

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