こうしたプラットフォームとしてのブロックチェーンが注目されるのは、仮想通貨の新たな使い道として、DeFiやNFTなどの市場が大きく拡大したことが影響している。ブロックチェーン上で動くプログラムはスマートコントラクトと呼ばれ、ほとんどがイーサリアム上で動作している。しかし、あまりのブームにイーサリアムブロックチェーンは混雑し、処理コストが高騰。代替として安価で高速のブロックチェーンが注目を浴びた。
こうした市場の変化は、国内の取引所のデータにも表れている。仮想通貨取引所のGMOコインが集計した、現物取引金額の内訳を見ると、1月に総取引額の64%を占めていたビットコインは、年末に向けて比率を減らし、11月には34%まで減少した。9月には、イーサリアムの取引比率を下回るなど、絶対王者ではなくなってきている。
GMOコインでの仮想通貨(現物)取り引き金額シェアの推移。ビットコインの比率は減少してきた
仮想通貨の人気は、このように入れ替わりが激しい。しかし世界でメジャーな仮想通貨も、国内の取引所では取り引きできないのが現状だ。時価総額トップ10の仮想通貨のうち、3位のバイナンスコイン、4位のUSテザー、5位のソラナなど、半分は国内で取り扱いがない。
時価総額トップ10の仮想通貨
利用者保護、マネーロンダリング対策などの観点から、国内の取引所が新たな仮想通貨を取り扱う際には事前に金融庁に相談が求められており、許可された仮想通貨の一覧はホワイトリストと呼ばれる。日本暗号資産取引業協会がまとめている資料によると、12月時点で国内で取り扱いのある仮想通貨は38種類だ。
DeFiの盛り上がりから世界ではさまざまな仮想通貨が開発され、1年で大きな変化を見せた。その結果、時価総額トップ10の仮想通貨のうち半分が国内では取り引きできず、一部の投資家は海外の取引所に脱出しているという。一方で、仮想通貨を使った詐欺も後を絶っておらず、消費者保護をおろそかにするわけにはいかない。
早くから法整備を進めてきた日本は、激動する仮想通貨の状況についていけず「仮想通貨後進国になった」という声も聞かれる。一方で、しっかりした規制のおかげで、安心して仮想通貨を取り引きできるのも事実だ。今後も、規制とイノベーションのうまいバランスが期待される。
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