仮想通貨の1年を振り返る 2022年の価格はどうなる?【後編】金融ディスラプション(1/4 ページ)

» 2021年12月02日 15時20分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 前編では2021年の仮想通貨を取り巻く状況を振り返った。後編では引き続き、ビットバンクの廣末紀之CEOと長谷川友哉マーケットアナリストの解説を元に、22年の課題と価格の見通しを考える。

 22年に向けてはどんな懸念があるのだろうか。廣末氏は規制の強化を挙げる。ステーブルコイン規制と、FATFが求めるトラベルルールへの対応だ。

 値動きが激しい仮想通貨に対し、法定通貨に価格が連動したステーブルコインに注目が集まっている。これまで難しかった決済用途での利用が進むのではないかという期待だ。一方で、ステーブルコインが脚光を浴びたことで、規制面の動きも加速してきた。

 規制の根底にあるのはマネーロンダリングの阻止だ。マネーロンダリングは国をまたがって行われることが多く、規制における国際的な協調が重要になる。これを司るのが「マネーロンダリングに関する金融活動作業部会」、通称FATF(ファトフ)だ。

 アンチマネーロンダリング(AML)では、誰が誰へいくら送ったのかを把握することが対策の基礎になる。そのため、国内では犯罪収益移転防止法(販収法)に基づいて、本人確認、いわゆるKYCが必須となっている。KYCまでは国内の仮想通貨取引所でも必須となっているが、これに加えて進み始めているのが、トラベルルールだ。

金融庁のトラベルルールに関するレポート

トラベルルールには実効性はあるのか?

 トラベルルールとは、ある取引所から別の取引所に送金があった場合、送金者の情報を相手先に伝えるというもの。これによって「誰が誰へいくら送ったのか」の把握が容易になることが期待される(仮想通貨送金に個人情報要求 FATFが求めるトラベルルールの課題)。

 「販収法の改正が控える中、国内でも段階的にトラベルルールを拡大する流れになっている。業界でかんかんがくがくの議論をしている」と廣末氏は言う。

 一方で、FATFのやり方は既存の金融機関の手法を無理矢理仮想通貨に当てはめようとしているという批判もある。「交換業はいいとして、プライベートな仮想通貨ウォレットまでKYCするのは実務上困難。トレードはいいがDeFiはどうするのか? イノベーションを阻害する可能性もある」と廣末氏。さらに、日本の取引所はトラベルルールを順守するのはいいが、世界に数多くある無国籍取引所は本当に実施するのかという疑問もある。

 つまり多くの開発とユーザー側の手間をかけて実施して、本当に実効性はあるのか? ということだ。「やらなければいけないが、過剰にやることに意味があるのか。ミニマムスタートをしながら、世界の状況を見ながら簡素化してやるべきだ。市場を縮小することにもなりかねない」と廣末氏は懸念を話した。

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